140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ナイト・チェイサーの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

ナイト・チェイサー(2015年製作の映画)
3.7
どうしてこんなことに…

オープニングは美しいパリの夜景を疾走する一台のタクシー。高級車のCMと違えてしまうほどの優美で高潔な走りをカットを分けたショットで映し出す。この時点で只者でない作品だと脳裏に刻まれ、期待感が募る。
しかしこのオープニングショットからラストショットを想像させるなど不可能に等しい作り。

閑散とした真夜中のパリを舞台に出来心でタクシー料金を踏み倒そうとした若者が、タクシーに追い回されるというスリラー。真夜中ゆえの静寂と若者2人の会話に挟み込まれるタクシーのエンジン音。下道も知り尽くされ逃走経路も次々に回り込まれる恐怖と陰の演出により運転手の口元までしか露わにしないが、腕のタトゥーはくっきりと映し出す未知への恐怖が常に付きまとう。この手の作品ならスピルバーグ監督の「激突」が脳裏をよぎるが、今作はラストに向け、ある種”吸血鬼”モノとしての側面を潜めながら、ハーレイ・ジョエル・オスメントとケビン・スペイシーが共演きた「ペイフォワード」的な側面すら持ち合わせているというある意味驚異的な脅威性がある作品だった。

また「激突」と違うのは運転手が車を降りる行為を行えること。さらにステップ演出として、車で追う→降車して素手で→武器を奪う→駆け引きとフェイズを踏んでいることが面白い。中盤のギャング団とのシーンは爽快感のある悪趣味なアクションシーンだった。

冒頭の導入が長く退屈であったり、無理のある接触シーンもあり難色を示す場面も多々あるが、何故か日本のアニメ的な雰囲気、例えば「BLOOD+」や西尾維新原作の「化物語」などがクライマックスに放出され、何かにつけ”こんな映画あったな”と思い返せる作品になっていると思う。