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ダンケルクのMoviePANDAのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.1
『運命の交錯 ~Experience~』

実に8ヶ月ぶりとなる劇場鑑賞🎦。映画から随分離れていた事もあって、先月の今頃は映画館で映画観るなんてまだ当分先かなぁなんて思ってたのに、秋にかけての公開ラインナップを見てみたら、そんな事言ってられませんでした😅💦そんな“観たいのありすぎ”な状況の中、今日午前中仕事してた時に決めました!「今日まず、これ観に行こう!」と❗️

ノーランの新作、しかも2時間をきる、なおかつ戦争映画。これだけでもう十分映画館に行く理由になろうかと思います。でも、そこはノーラン。やっぱり“既定路線”からハズしてきましたね(’-’*)

戦争映画は数あれど、それが大作ならやはり肝となるのは見応えのある戦闘。でもこの『ダンケルク』は、激しい交戦の最中(さなか)ではなく、“撤退”を描いた作品。その為、前述の要素を期待するとやや肩すかし。それもそのはず、監督が自ら語ったこの映画の目的はこうでした。⤵️
「キャラクターへの共感は彼らのストーリーとは無関係だ。私は台詞を通して自分のキャラクターのストーリーを伝えたくなかった。問題は彼らが誰であるかでも、彼らが誰になるかでも、どこから来たのかでもない。私が興味を持った疑問は、彼らが脱出するのか、彼らが突堤に行く間に次の爆弾で殺されるのか、それとも横断中にボートで潰されるのか、それだけだ。」
とは言え、銃弾が飛び交うシーンもあれば、空中戦も描かれる。しかしながら目がいくのは、飛び交う銃弾から逃げまどう兵士、命をかけ遊覧船で助けに向かう家族、そして着水後に脱出しようともがくパイロット。むしろそういった姿にこそ目がいく仕様であり、描かれるのはいつ命を落としてもおかしくないまさに「生き抜け」な瞬間の数々でした。

徹底された実写へのこだわりもさることながら、劇中の戦火に放り込まれた様な爆音と、ハンス・ジマーの劇伴がこちらをアゲ⤴️煽る!『ダークナイト』以降のふたりのケミストリーの象徴とも言うべき、刻まれ続けるリズム。今作では時計の秒針の様なその音が、命のかかった“待機の不安”と途切れない緊迫感を持続させます。またその緊迫感の中、当事者目線で語られるというより、圧倒的な臨場感をもって“その場”を体験させられる!その分極力セリフは排され、代わりに今回のノーランは間や表情で語る!キリアン・マーフィーやトム・ハーディといった一部常連組もいますが、やはりベテラン勢がうまい!ボルトン海軍中佐を演じたケネス・ブラナーは、語り口や立ち振舞いから自然と人としての高尚さが垣間見えました。そして何と行ってもマーク・ライランス!“ふつうの人”の内なる情熱みたいな、静かなのに目で心根を語る様な演技が本当に素晴らしかったです。(ある人物にかける人生を救う一言がまた素晴らしい!)

この映画を観て、直接的な反戦のメッセージというのは感じませんでした。その為、もしかしたらそこで評価が分かれるかもしれませんし、その点で誰もが認める名作とは呼ばれないかもしれません。では、この様な題材の映画において感じられた体験を、極上の映画体験と呼ぶのは不謹慎か?もしそうであっても、ここで言いたくなるのは、この映画ならでは、この映画だからこそ得られた体験があったという事。ここのところのノーラン監督作からは、最後にいつも何かが立ち上がるのを感じました。それは、希望であったり、愛であったり。そして今作であればそれは「生きる喜び」ではないでしょうか。誰だって傷つきたくないし、ましてや死にたくはない。この映画は、それを圧倒的体験を通して観ている者に感じさせる映画。直接的でなくても「生きてこそ」と思わされたという点でこの映画の意義はしっかりあり、極上の映画体験という表現は不謹慎では無くなるのではないでしょうか。

最後に…
この映画でも、やはりノーランらしく“時間”というものがポイントになってきます。三つの視点で描かれる物語に“淡々”を感じていると、いずれ“判明”に驚く事になり「そう言う事か!」と唸る事になりました!まあ、それはあくまで個人的な所感かもしれませんが、いやはや、やはりノーランの創る映画は面白くてスゴい!「私はブロックバスター映画の黄金時代に育った。あの感じを取り戻したいと思っている。当時の映画は、自分が知らない世界につれていってくれたものだ。当時の映画が与えてくれたような驚きや感動を、誰もが楽しめるエンタテインメント映画として実現したい。」とは、数年前の監督のお言葉。今作においても、彼はブレてませんでしたよ😃
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