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10 クローバーフィールド・レーンのyoukiのレビュー・感想・評価

3.0
謎解き脱出映画。別に悪くはなく、演技もとてもクオリティが高い。しかし、物語の点で問題が多く見終わった感想としては「微妙、、、」といった感じ。

女の人が交通事故に遭い意識がなくなり、目を覚ますとそこは監禁部屋だった。ここはどこなのか?どうして私は監禁されたのか、、、

これが映画の初めの部分。謎解きorスリラー映画が好きな人なら一瞬で惹かれるような、独特かつ見事な出だし!
と、一瞬思うが本当にそうだろうか。よくよく考えると、最近巷で持ち上げられる低予算のスリラー映画の出だしは、むしろこれと似たようなものばかりのような気がする。
今作はは映画マニアのなかで有名なあのクローバーフィールドシリーズの二作目。なので今作のウォッチャーの大半は、世界中の人気ホラー・ミステリー映画をすでに制覇している映画ファンな気がする。彼らを満足させるには、この始まりはまだ不十分なのではないか。

一般的なミステリー小説は、物語の初めに一番大きな謎を読者に提示する。そしてそのタネを最後に明かし、それで真犯人が捕まり話が終わる。これがミステリー小説の簡単なストーリーの構成。読者もこれくらいのことは理解した上で物語を読み進める。アガサ・クリスティの小説やコナンのドラマにも同じことが言えると思う。
問題は種明かしをするまでの間、どうやって間伸びさせないで読者の関心を引かせ続けるだ。そのために、犯人と一番に疑われている人物を途中で殺したり、実は殺された人物が生きていた、などの変化球が物語の中盤で加えられる。
こういった飽きさせない工夫をすることで、平凡な映画や小説がmasterpieceになる。今作にも確かにその工夫はあった。ゲーム中に元海軍の男が変な言動をしたり、その娘を虐待していた証拠がを主人公が発見したり。しかし、これら種明かしをする前の飽きさせない工夫一つ一つがあまりにも弱すぎた。「こいつらさっさと外に脱出しないかなあ」と終始思っていた。

そして今作が駄作っぽいと感じた最大の原因は、最後のオチの部分。クローバーフィールドシリーズなので、
「どうせUFOと米軍が戦っているんだろうな、、、そのせいで外気が汚染されて市民も自宅待機になって、、、」
みたいなことを私は雑に予想していたが、それが99%当たってしまった。私の期待の遥か下をいく結末でしかなかった。何の捻りも見受けられなかった。
それに、今思えばUFOと最後戦うのもかなりの急展開ではないか。無理やりクライマックスを作ったように思える。一応巨大な偵察機・軍用機が巡回するような音がたまに聞こえるという小さな伏線も準備されているが、これもまた伏線が弱い。結局その地球外生命体やそいつらの武器・特性に関する情報などが全くわからない状態で急にUFOを出されても、出オチにしかならない。

あと、その変哲もない結末を見たとしても、全ての謎が解明される訳ではなかった。
結局娘は虐待されていたのか?外が危険さを知っていながら、どうして骨折男は銃を奪って逃げようとしたのか?何故男達は外の現状をある程度理解しているにも関わらず、主人公にしっかりと説明しなかったのか?一番初めの主人公の家のシーン、何か伏線になるようなアイテム(具体的に何なのかは忘れた)も見受けられたがあれは何なのか?たかがハサミやカッターでなぜ裏切りだと海軍の男は見抜けるのか?シャワー室のカーテンで服を作るなら流石にバレるのではないか(これくらいの欠陥はまだ許容範囲だけど、、、)?
これら様々な謎が放り投げ出されたままだ。ずっと気になっていた開かずの扉をようやっとの思いで開けても、中には何も入っていなかった気分

前述の通り、演技は3人とも素晴らしい。密室映画は、登場人物の数も限られ、カメラで捉えられるオブジェクトも少ないので演技で勝負する宿命を辿りがちだ。その点だけで評価すれば、この映画はの質はかなり高かった。
先ほど散々言った脱出後出現したUFOだが、このCGは素晴らしかった。

個人的に、一番今作を見てテンションが上がったのは、扉越しに顔の皮膚に疾患のある女が突如現れたところ。そして外に出てすぐ、空飛ぶ鳥達を確認し、マスクを外し主人公が安堵するところもよかった。今作で珍しい期待が裏切られた、瞬間だった。

おそらく、ホラーやスリラー映画にあまり詳しくない人たちの方が、このニッチな映画をより楽しめるのではないか。あるいは中学生くらいの子供達も楽しめると思う。薄い内容の物語でもCGが良ければ全てよし、と思う映画好きにもおすすめできる。
時間はそこまで長くはないので、サブスクで何も見たいものがないときに、横になりながら暇つぶしがてら見るのにもこの映画は適している。
そんな映画。
youki

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