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ヨーロッパ横断特急のHKのレビュー・感想・評価

ヨーロッパ横断特急(1966年製作の映画)
3.4
だいぶ前からトランティニャンのパケ写が気になっていたので鑑賞。
アラン・ロブ=グリエ監督の作品は初見です。
グリエ監督は小説家・脚本家でもあり『去年マリエンバードで』の脚本もこの人だとか。
『去年~』は学生時代(約40年前)に見てるはずですが記憶は完全に消失。

原題は“Trans-Europ-Express”で実在の列車名だそうです。
冒頭、列車に乗り込む映画人らしき3人組が、これから撮る映画のプロットを話し始め、そのやり取りをテープレコーダーで録音したりしています。
この3人が話す麻薬の運び人が主人公のストーリーも映像化されるため、映画と映画の中の映画が並行して描かれるわけです。

ところが、劇中劇の主人公(トランティニャン当時36歳)が3人組と同じ客室に乗り込んで来たりして現実とのボーダーが曖昧になり、いわゆるメタ展開になっていきます。
お互い目と目が合ってしばし見つめ合い気まずい雰囲気になって出ていく主人公。
「今のトランティニャンだったね」「主役に使ったらどう?」なんていう会話も。

しかも3人組の監督らしき人物が語るプロットがかなりテキトーで、助手に矛盾を指摘される度に話が変わったり前に戻ったりしてかなりイイ加減な展開に。
ちなみにこの監督役はグリエ監督本人でツッコミを入れる助手役は監督の奥さんだそうです。

渋めのフレンチ・ノワールかと思ったらかなりスッとぼけた味の実験映画というか、ここまでくるともうギャグ映画と言ってもいいのかもしれません。

さらに、監督はSM好きらしく脈絡なくSM描写が入ってきます。
主人公が持ち歩く鞄には緊縛用の縄や鎖が入ってるし、仕事そっちのけでマリー・フランス・ピジェ(当時22歳キレイ!)とSMプレイに耽るし、ラストの罠にかかるところももう完全にギャグ。
トランティニャンは挙動不審で変態の主人公を面白そうに演じています。

う~ん、この監督、他の作品も観てみるかどうか迷うところです。
HK

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