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シラノ・ド・ベルジュラックのRのレビュー・感想・評価

4.2
有名だけど全く見る気の起こらない作品をあえて見ていこう第1弾。タイトルがわけわからん上、フランスの恋愛モノ時代劇、しかもジャケット見てよ。どれもまったく興味を惹かない。さて、シラノドベルジュラックとは、最も高名なフレンチ俳優ジェラールドパルデューが演じる主人公の名前。ただでさえ鼻のデカイ俳優が特殊メイクでさらにでかい鼻をつけて演じてる。頑固でクセ強いけど、繊細で誇り高き愛らしい人格と、巧みな詩の才能と、すさまじい剣術を備えており、一方で、デカ鼻にコンプレックスを持ち、オレが女に好かれるはずがないと恋を諦めてる。彼には美しい従妹ロクサーヌがいて、実は彼女に対する熱い恋心を秘めている。が、彼女はクリスチャンというスカしたイケメンに恋してる。クリスチャンも彼女が好きなのだが、彼女は詩への情熱がすごくて、愛の詩が巧みに紡げなければ見向きもしない、てか、この映画では、社会全体が外見や剣術と同様に詩心を重視している。なぜならば、言葉はその使用者の精神のダイレクトな表れだからだ。ナルホド、確かに一理ある。ところが、クリスチャンは中身がただのアホタレなので、詩心ゼロ。そんな彼を助けて二人の愛を成就させてやろうと、代わりにシラノが詩作してラブレターを書いてやる。自分の恋は諦めてるからね。シラノの燃える情熱を宿した見事な恋文でますますクリスチャンに惚れ込んでいくロクサーヌ。だが! ロクサーヌはクリスチャンの口から直接恋の詩が溢れ出すのを聞きたい、と望み、ピーーーーンチ!って感じで話が進んでいく。この辺のやりとりは、シラノのために心に少々痛みを感じながら、ケラケラ笑える可笑しなコメディになってる。僕はとても真っ直ぐな人間なので、いや、もう自分らしく行って無理なら無理でエエやん…アホちゃうかコイツら、と思ってしまいがちだが…笑 ところが、それでもワクワク楽しく観れるのは、全体的な演出がものすごくハイで、それに合わせたみんなの演技、特にジェラールドパルデューが感動的なくらい素晴らしいからでしょう。あと、フランス語を勉強したことのある人ならば、セリフがすべて韻文になってることに気づくでしょう。よって、全セリフにミュージカルのような趣があり、聴いてて実に気持ちいい。字幕も頑張ってそっちに寄せた感あるけど、逆に読みにくくなってる哀しさがあるようなないような…。本作を大いに楽しみたいのであれば、ある程度フランス語を嗜んでからの方がよいかも。要素としてはかなりデカイので。まぁ、けど、なくても、楽しい映画なので。後半は、前半の楽しさのすべてが悲劇へと裏返っていく展開になっていくのだが、終盤のシーンはおそらく多くの人、特に女性が涙を禁じ得ないのではないでしょうか。僕はそうでもなかったけど。だってあまりにボクの生きてる感覚と違いすぎるんだもん! しょーがない! ただ、panacheを心意気、と訳していたのは、おお! すごくいい! 👏と別の感動をしておりました。本作で一番気になった点は、ヒロインのロクサーヌ。言葉に宿ったパッションのみを盲目的に崇拝してる姿はさすがにちょっと頭悪く見えるし、あのー、あんた絶対そのうち誰かにコロッと騙されるよ、と思ってしまいました。本当のところは、言葉なんてどれだけでも飾れるわけやからな。気いつけや!
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