むぅ

ショコラ 君がいて、僕がいるのむぅのレビュー・感想・評価

4.1
「ボジョレーか!」

恋多き友人の
「今まで会った中で...」
「ここ最近の...」
「きっとこれ以上は...」
ご本人にとっては毎度大きな違いでも、こちらとしては何が変わったのかいまいちピンとこない枕詞に、とうとうツッコミが発生した。本人含め大爆笑だった。

"笑う"ことは、とても素敵な事だと思う。
でも、そこに笑っていない人がいたり、無理して笑うしかない人がいることになった途端に、とても残酷なことになる。

20世紀初頭のフランス。
白人芸人フティットと黒人芸人ショコラ。かつてない2人のコンビがサーカスで人気を呼んでいた。
スターへの道を登りつめながらも、"笑わせて"いるのか"笑われて"いるのか、その苦悩に揺れるショコラが描かれる。

キラキラした"笑い"が増えたらいいと思う。
人種や民族、ジェンダー、宗教、障がい、その属性を踏みつけるような"笑い"を見かけると苦しくなるようになった。
どんなに素敵な笑顔だったとしても、キラキラして見えない。
でも、それはわりと最近のこと。
多くの映画に触れるようになるまで、自分が生活している圏内でマジョリティ側にいて、どれだけ多くの選択権を持っているか知らずに過ごしてきた。
キラキラしていない"笑い"を、楽しんできたのだと思う。

ショコラを笑っている観客が自分と重なった。

"笑われて"いることを痛感したショコラが虚勢を張ったり、ギャンブルに溺れていく様が私にはとてもリアルに感じられた。

「空気は吸うものじゃなくて、読むものだから」と、なかなかのパワーワードに出会った時に、なるほど一理あると思った。
そこに"笑い"が起こる時、"笑えない"も起こっていないかの空気には敏感でありたい。
"笑えない"には、それこそ空気をたっぷり吸い込んで、違うんじゃないかなと言えるようにありたい。

"ボジョレー"話で笑った後、今年のボジョレーをみんなで飲もうと約束した去年。叶わなかった。
マスクをとって、お酒を飲みながら、大口を開けて笑い合える日が早くくるといいな。
むぅ

むぅ