『サウルの息子』で脚光を浴びるハンガリーの気鋭監督ネメシュ・ラースローの短編映画。
“ちょっとの我慢”と訳せる本作は『サウルの息子』のコアを濃縮したかような地続きの作品です。
たった数分、セリフもほとんどない。それなのに『サウルの息子』を見終えた時と同じような重たさを感じさせるからスゴイ。
たぶんこれワンカットなのかな?
ずーっと主人公のみにフォーカスしているけれど、その主人公は何をするわけでもなくオフィスと思われるところを動いたり着ている洋服をいじったりしているだけ。
この映画は、タイトルがなによりも雄弁に内容を語っている。
今作のテーマはまさしく『サウルの息子』と同じです。
サウルは目の前の出来事を全身で感じながらも息子を葬る、という“夢”に逃避することで現実を見て見ぬフリしました。
今作の主人公は、建物の中で、つまり隔絶された世界の中で現実をやり過ごします。
ちょっと我慢すればいいんだ。
そうすればきっと終わるんだ。
平和な日本からすればおよそ信じられないような狂気ですが、この感覚は痛いほど分かります。
その度合いは僕の想像を超えてるんだろうけれど。
短編映画としての完成度は非常に高く、これをベースに傑作長編を生み出す過程はニール・ブロンカンプを思い起こします。
若き監督として大きな期待を寄せるに相応しい才能です。