磔刑

ゴッホ~最期の手紙~の磔刑のレビュー・感想・評価

ゴッホ~最期の手紙~(2017年製作の映画)
4.5
「沈黙が真実を雄弁に語る」

技術力の高さに目を奪われるが、ミステリー映画としても高品質なので、総合的な満足度は高い。
亡くなったゴッホの手紙の行方を通して描かれる数日間。それををさまざまな人物の視点を通して描き、そこから生まれる齟齬がミステリーに奥行きを出し、ゴッホの死の謎という推進力でグイグイ物語を進め片時も目が離せない。

自分とフィーリングの合う絵画を目の当たりにすると、静止画にも関わらず、映像(動画)となって語りかけてくる事が稀にある。その絵画の表現力に込められた無限のエネルギー、根源的パワーを先進的な技術で見事に表現している。見る者を飲み込む程の独創的な静寂が醸し出す美しさ、それと相反するギラギラとした暴力的なエネルギーが混在する世界観はまるでゴッホの一枚の絵画が語りかけているようにすら錯覚する程で、今作は絵画の本質の一つを巧みに映像化している。

生きているうちは画家としては決して幸せとは言い難い人生だったかもしれないが、亡くなってから何十年も経った現在、時間と空間を超え、新たな技術で生まれ変わった自分の作品を見れば彼の受難で満ちた人生が決して無駄ではなかったと思ってくれるのではないだろうか。
そんなゴッホが草葉の影から喜んで見てくれるであろう、映画にしても絵画にしても革新的な一作である。
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