本作はバレエ「白鳥の湖」のプリマに選ばれた主人公の姿を描く作品だが、プリマを巡る女同士のドロドロした争いなんていう(私の大好物な)描写はあまり描かれていない。
主人公ニナのライバルとなるリリーなんかもお節介なだけで悪い人間ではないし、むしろニナに純白を押し付ける母親の方が有害に思える。
バレエシーンが実はボディ•ダブルだと波紋をよんだが、第83回アカデミー賞で主演女優賞を受賞したナタリー•ポートマンを評価するべき点はバレエ•シーンではない。
白鳥から黒鳥へ、無垢なる少女から妖艶なる大人な女性への変貌を完璧に体現した演技力にこそ凄みがあり、それこそが本作最大のテーマなのだ。
押し寄せるプレッシャー、受け入れがたい変貌、恐怖の先にある狂気と才能の壮絶な開花の瞬間を鑑賞者に全力で叩きつける大怪作!
爽快感と不快感が入り混じるクライマックスまで、バレエのように風雅な映像の数々で釘付けされること間違いなしだ。