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ふたりの桃源郷の小のレビュー・感想・評価

ふたりの桃源郷(2016年製作の映画)
3.8
電気も水道ない山で暮らす一組の夫婦とその夫婦を支える娘家族を25年間追い続けたテレビのドキュメンタリー番組の映画化。

25年も追い続けたというのが凄いけど、当初は不便な山で畑を耕し、キノコを採ったりして暮らしているという、今の時代から見ると、逆に最先端な生き方を伝えることが目的だったのかもしれない。

しかし、夫婦が老いていき、やがて終焉を迎えるところまで追ったこの映画は、人生そのものを映し出している。

年をとり、山暮らしができなくなる夫婦。それでも老人ホームから山に通う二人だったけど、やがてそれも困難になる。

突きつけられるのは、自らの将来。運よく長生きできたとしても、待っているのは、体と頭が言うことを聞かなくなる変わり果てた自分の姿。それは全ての人に、わけ隔てなく訪れる真実の姿。

夫婦には娘さんが三人いる。三人は月に一度里帰りをし、老いた両親が好きな山で一緒に過ごす。そのうちに三女ご夫妻が近くに引っ越してきて、面倒をみるようになる。

二人が娘さんたちに何度も「ありがとう」を繰り返す姿は、自分の祖父母、両親と重なって、にわかにジーンとする。

感謝をするのは、子が親に育ててもらったことに対してだけではない。いろいろな思い出をくれ、変わり果てようとも気をつかってくれる子に親も感謝するのだ。

家族は「ありがとう」なのだ。「ありがとう」の連鎖なのだ。子は「ありがとう」の気持ちを態度で伝え、親は言葉で「ありがとう」と伝えるのだ。

人類がしぶとく生き残っている理由。それは“家族”を支える「ありがとう」なのかもしれない。
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