小

美しい星の小のレビュー・感想・評価

美しい星(2017年製作の映画)
3.7
三島由紀夫の異色SF小説が原作。笑えて、意外と退屈しないのだけれど、正直言って、何が何だかよくわからない。だから観た人それぞれが好きなように解釈すればよいのではないかと。

予報が当たらないことで有名なお天気キャスターの大杉重一郎、妻・伊余子、長男・一雄、長女・暁子の4人家族。

ある日、重一郎は空飛ぶ円盤と遭遇したことをきっかけに、自分が火星人だと思い込む。そして、一雄は水星人、暁子は金星人だと思い込む。そんな家族の中にあって、母はひとり地球人。

火星人の重一郎の目的は温暖化で滅亡の危機にある地球を救うこと。彼は番組の生放送で、一刻も早く温暖化を回避する行動をとるよう視聴者に訴え続ける。一方、一雄と同じ水星人の黒木克己という人は、地球は滅びるべきだと考え、政治家を操り温暖化を放置、進行させようとする。

黒木が操る政治家の秘書となった一雄は、自らが政治家となって権力を握り、地球を救おうと考える。暁子は、かつて金星人が地球人に教えた美がゆがめられたことが問題と考え、大学のミスコンに出場してそれを正そうとする。

地球人の母は、飲めば美しく、健康になるという「美しい水」を販売するマルチ商法で意外な才能を発揮する。とはいえ、本人はこの水が本当に良いものだと信じて疑っていないように見え、それを売ることは良いことだと思っているようだ。

予報が当たらないお天気キャスターの地球危機説はほとんどギャグ。他の家族の地球を救う、ないしは地球を良くしようとする努力も無駄な抵抗に見えてしまう。

それでも重一郎は、温暖化に警鐘を鳴らし続ける。やがて黒木と対決するような状況となり、地球人的価値観では不幸な状況に陥る。

その後いろいろあって、重一郎は、とあるところに行き、とあるものに導かれるように進んでいくと、突然真っ白。そして見えてきたのは…。

ああ、梵我一如、あらゆる不幸は勘違い。重一郎は観客で、映画を観ていたのではなかろうか。ホワイトアウトは「人牛倶忘」みたいと思ってしまうのは、ズレているだろうか。皆が重一郎の境地に達すれば世界は平和、地球は美しいのに、なんて考えるのはおかしいだろうか。

強引なマイ比較をすれば『メッセージ』が西洋哲学なら『美しい星』は東洋哲学。理屈で考えてもわからない。重一郎のように極限まで行きついて、はっとわかる境地。この映画を観ていただけの自分は、悟りには程遠いけれど、監督は悟ったのかしら。それとも、もう悟っているのかな?

●物語(50%×4.0):2.00
・良くわからないけど、まあまあ面白かった。テーマが何かは観た人次第だけれど、好きな考え方を想起させてもらった。

●演技、演出(30%×3.5):1.05
・火星人ポーズ、良かった。地球人のお母さんに共感かな、地球人なので…。

●映像、音、音楽(20%×3.0):0.60
・良くも悪くも…。
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