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美しい星のRのレビュー・感想・評価

美しい星(2017年製作の映画)
4.3
一風変わった面白さ! 見る人の立場とか思想とかタイミングによって感じ方が相当変わるんじゃないだろうか。本作にも出てくるようなモロ常識人側の人が見たらどう感じるのか気になるところ。冒頭、普通によくあるタイプの問題を抱えた裕福な家族が、ちょっと高級な料理点で食事をしてるシーンから始まる。パパは当たらない天気予報をこれにも意味があると自分を信じ込ませながらやり続けてる気象予報士、ママは自分の人生の退屈に気づかないふりして生きてる感じの女、娘は外見的な美しさでしか評価されないため自分の殻に閉じこもってて、息子は嘘くさい世の中を認めるのが嫌なのか世の中に認められないのがイヤなのかフリーターしてる不機嫌な青年。この4人で食卓を囲ってはいるけど、みんな心はバラバラ。けど、そんな彼らにとんでもないことが起こります。まず、おかんが美しい水という水を売るネットワークビジネスを始め、なかなかの手腕を発揮しだんだん成功し始める。そうこうしてる間に、おとんは火星を見て涙を流して自分が火星人だと気づき、娘はミュージシャンの男とUFOを呼んで自分が金星人だと気づき、息子はエッチするために彼女を連れ込んだプラネタリウムで自分が水星人だと気づく。父は変なポーズをとりながら地球温暖化などの環境問題をテレビで叫び出し、娘は大学のミスコンに出場、息子さんは政治家の側近として仕事を始める。この一見更にバラバラ度を増したように見える一家が、家族としてひとつになるまでを、ものすごシュールなストーリーと演出で描いている。まーとにかく見てて面白いのが、一般的常識人たちの表面だけ繕って波風たたねばそれでよいのです精神、金になるなら見た目だけゴージャスにととのえて人を騙すことも厭わない精神、見た目がキレイってだけでどんだけでもチヤホヤしてまう精神、ほんの一瞬でいいからおもしろおかしく話題の中心になりたい精神、などなど、そと見だけで中身がいよいよ空っぽになってしまった現代のzeitgeist。それを見事なほど凝縮して映し出すなか、その流れに逆行し、自らの使命を行動に移さんとする異星人たち。異星人たち? ただのキチガイ? 見てる間中、こっちの頭をぐわんぐわんさせる何とも言えなさがひたすら続くので、途中から脳がショート起こして大変やった笑 最後の方はただただストーリーの流れに身を任せるしかないところまで行っちゃいます。それでも、こっちの状態などお構いなしで、自然や宇宙に対する人間の位置づけ、そこから考えられる人間への合理的対処とかも講じられ、その後、人間の営みの美しさをしみじみ感じさせるシーンもあって、とにかく最後まで感性を休ませてくれるような容赦一切ナシ。ひええええ、と思ってると、最後の最後に、狐につままれながらホロリとくるエンディングが待っていますよー。かなり好みが別れそうな作品やけど、特に前半は笑えるシーンのオンパレードで、常にクスクス状態が続くし、途中のぶっ飛びシーンは覚醒&興奮するし、リリーフランキーと佐々木蔵之介の演技もすばらしいので、一見の価値はあると思う。橋本愛ってこんなにゴツかったっけ?ってなったけど、ウェディングドレスのシーンはすごかったね、一般人との見た目のレベルの差がすごい。何だかんだでそう思わざるを得ないものがあるよねー。あとリリーのケツにはわろた。見るたびにいろんな側面が微妙に違って見えそうな作品やった。そのうちまた見たい。三島由紀夫の大ファンであるにも関わらず、美しい星は読んでないから、また読んでみよっかな。
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