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天国からの奇跡の小のレビュー・感想・評価

天国からの奇跡(2016年製作の映画)
4.0
イエス・キリストの復活を描いた映画『復活』のレビューを書いた際、フォロワーさんから『ふしぎなキリスト教』(橋爪大三郎、大澤真幸共著)という本を教えていただいた。これが滅法面白い。1回読んだけど、現在2回目をメモを取りながら読んでいる最中。

本のあとがきに<キリスト教を踏まえないと、ヨーロッパ近現代思想の本当のところはわからない。現代社会もわかない。日本人が、まず勉強すべきなのは、キリスト教ではないだろうか>とある。

アマゾンのレビューには、否定的なコメントもあるけど、あとがきのこの点については本当にその通りだと思うし、この点を考えるうえで、とても有意義な本だと思う。

それで、本を読んでいなければ観るつもりのなかった本作を鑑賞した。重度の消化器疾患を抱えた女の子に奇跡的なことが起こった実話を基にした物語。神への信仰を補強するような奇跡を描いているだけだろうと、正直あまり期待していなかったけれど、良い意味で裏切られた。

この映画は一神教における信仰とはどういうことかを描いていると思う。『ふしぎなキリスト教』は信仰について、次のように述べている。

<信仰は不合理なことをあくまで合理的に、つまり、Godとの関係によって、解釈していくという決意です。自分に都合がいいから神を信じるのではない。自分に都合の悪い出来事もいろいろ起こるけれども、それを合理的に解釈していくと決意する。こういうのなんですね。いわゆる「ご利益」では全然ない。>

映画は、少女に起こった奇跡、つまり「ご利益」的なことが物語のメインになっているのだけれども、この信仰の本質が、少ないシーンの中で結構印象に残るように描かれている。これには「そうきたか」と。「やるなぁ、キリスト教」と。

キリスト教って、理不尽な世の中を納得して生きていための、とても良くできた理屈だと思う。知れば知るほど面白く、好奇心を掻き立てられるとともに、世の中のこれって、こういうことだったのね、という感じで、もやがパッと晴れるような快感を覚えるのではないかと。

私はキリスト教徒ではないし、神を信じていない。これからもそうだろう。それは<神に支配されたくないという感情>を持ち、<「はまると怖い」>と思っているからなのかもしれない。でもだからといって、キリスト教を理解することを避けるのはもったいない。

<近代というのは、ざっくり言ってしまえば西洋的な社会というものがグローバル・スタンダードになっている状況である。><その中核にあるのがキリスト教であることは、誰も否定できまい。>

<日本は、キリスト教についてほとんど理解しないままに、近代化してきた。それでも、近代社会というものが順調に展開していれば実践的な問題は小さい。しかし、現代、われわれの社会、われわれの地球は、非常に大きな困難にぶつかって(いる)。>

<こういう状況の中で、新たに社会を選択したり、新たな制度を構想すべくクリエイティヴに対応するためには、どうしたって近代社会の元の元にあるキリスト教を理解しておかなければならない。>

なので今、本と映画の両方からキリスト教を勉強中。
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