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透明人間のneroのレビュー・感想・評価

透明人間(2019年製作の映画)
3.5
本来透明人間ってコンテンツはとてもSF的だと思う。これまで映画化された作品では、だいたい肉体をどうやって不可視にするかという視点で制作され、その事による悲劇で幕を下ろすクライムストーリーだったり皮肉なラブ・サスペンスだったりしたわけだ。あとはエロコメディにしかならん(好物だけど)
で今回は、ドラえもんアイテムを持ち込んでのホラー展開! 現実に光学迷彩が実用化されようという現代において、このアプローチはなるほど21世紀(♪パチン)と膝を打っちゃうね。肉体透明化アプローチでネックとなる眼球問題もクリア出来ちゃうのは素晴らしい。

ダークユニバースの一編として制作とかって情報あったから、どうなのかなあと思っていたら、監督・脚本がリー・ワネル。前作の「アップグレード」がなかなか見せるB+級のSFだったので、SFサスペンス風ならイケルかもとちょっと期待してた。(実はSAWシリーズの脚本も彼とは知らなかったんよ。アレは金もらっても見たくないくらいビビリなんす。)

さて、大波ドッパーーンの東映風オープニングからすでにオドロン風味で、いきなりワケアリお姉ちゃんの脱出行から始めるという女性映画的展開。ハイテク感も醸しつつ心理サスペンスムードは盛り上がる。とにかくSEがやたら怖いのよ。

やがて本筋、透明人間によるあんなのやこんなのやのジラシが入って、次第に江戸川乱歩風人間椅子か屋根裏おじさんかというストーカー風味へとエスカレートするわけだが、ちょっとネタバラシが早すぎるんちゃいますか。技術的な裏付け描写が微塵も無いのも気になった。

本当に、あっちの人はどうしてまず照明点けないのよ! いくら間接照明メインと言っても、いっつもイライラするんだわ。だいたい、ちょっとお姉ちゃんが考え浅いよね。妹との待ち合わせだって、他者がいたって意味ないでしょ。池の真ん中とか、砂浜とか、周囲5mにポテトチップ撒き散らすとか、いくらでも手はあるじゃんね。精神的に追い込まれているのはわかるけど、なんかちょっとオバカくさい。過剰対応するくらいのほうが説得力出ると思う。

妹が殺されてから、当然ながら追い込まれ感はドドンとアップグレード! 罪を着せられても誰も信じてくれず精神病棟隔離っていう焦燥感・絶望感は心理劇として十分で、ここで兄貴の怪しさも全開!クライマックスへ一直線、なんだが、ヤツがせっかく透明なのにかなり分別くさいのでここからは完全にポリス・ストーリー。雨描写もいまいち活かしきれずドンパチカマしてファーストエンド。からお約束のトゥルーエンドへ。

うーん、ちょっと長いかなあ。特にラストのリベンジは蛇足っぽい。
終盤のどんでん返し、実は生きてたエイドリアーーん!以降は余分。顔の光学偽装マスクが既に完成してて兄と入れ替わってたとかでも良かったのでは? 透明と虚像に翻弄されるって攻殻じゃないけどSFっぽいじゃん。隠したアレの使いみちは別に考えるとしてね。
大体生きてたら、あんな超絶技術を握ってる人物、軍なりCIAなりが絶対離さんでしょ。どっかの基地に一生幽閉確実だよ。それこそが悲劇!
100分以内くらいでキレよく収めてほしかった。

ワンちゃんゼウスがいかにも伏線くさい扱いの割に、まっっったく活躍してくれなかったのが残念だった。だいたい飼い主に吠えないでしょ。犬の嗅覚をどこかでキーに使うべきだったね。


<追記>
思わせぶりに何度も使われる<ジアゼパム>だけど、調べると抗不安薬としてよく処方される結構安全な薬らしい。過量摂取してもあんな昏睡や昏倒にはなりそうもないんだけど・・・ 同系統の薬は使ってる人も多いと思うが、説得力あるんかしらん? 薬学系の方、教えて。
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