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ANNA/アナのneroのレビュー・感想・評価

ANNA/アナ(2019年製作の映画)
3.0
祝・営業再開! 実に久々の劇場は座席もガラガラで、映画館らしいノイズがないのはさすがにちょっと寂しくもある。ワクチンが行き渡るまでは仕方がないのかな。

というわけで再開1本目は盛り上がりを期待して「ANNA」。
やっぱりベッソンくんはこういう方が良いよ。リュック・ベッソンテイスト全開のエスピオナージ・アクション。舞台は1990年のパリ/モスクワがメイン。ベルリンの壁が崩壊した翌年であり、さらに翌1991年にはソ連も崩壊。もちろんKGBも解体される。世界のパワーバランスが大きく変動した数年間だ。
設定は「アトミック・ブロンド」「悪女」「レッド・スパロー」なんかとかぶる。美貌の女スパイが各国の思惑に翻弄されつつ自分の生き方を模索する物語だ。特に新しさもなく驚くような独自性も少ないが、キレのいいアクションと時系列を目まぐるしく往還するカットワークで、119分という時間を感じさせないテンポは心地よい。

主役は新人サッシャ・ルス。いわゆるEライン美女顔とはちょっと違うが、眼が印象的で謎めいた雰囲気はデビュー時のミラを思わせる。「ヴァレリアン」にも出ていたそうだが全く記憶にない。
本職モデルだけあってカメラ前でのポージングのサマになること。目まぐるしい変身や無表情な殺戮がよく似合う。動きのキレもよく、大盤振る舞いで繰り出されるハードなアクションもなかなか爽快。素直に彼女の存在感を楽しむ映画だろう。

実は恋人モードちゃんの方が個人的には好みだったりする。それこそ「アトミック・ブロンド」で願ったように、DGSE(フランス対外治安総局)のエージェントだった彼女とアナの百合対決くるかと思ったが、そうではなくただ涙で別れるってベッソンらしいセンチメンタルさだね。アレクセイとレナード、男二人の虚仮にされっぷりも合わせて、殺伐さから一歩距離を置いたあたりがフレンチっぽい。ラストのオチまで含めてなかなか気持ちよく騙してくれた。
オルガばあさんは最後の局長(議長?)となったのだろうか?

そういえばアナのクソ彼氏、なんかあの眼に見覚えあると思ったら「T-34」のイブシュキンくんではないの!! これはちょっとうれしいサプライズ!

とはいうものの全面的に称賛ともいかない。ただでさえひょいひょい時系列が移動するのに、ガジェット類が時代背景を混乱させるのはいただけない。
1989年以前は存在しないノートPCをアナ(1987年)が使っているが。画面解像度も高すぎるし、だいたい貧乏学生じゃ買えるはずもない。KGB(1990年)のノートPCはなぜかIBM-ThinkPadだが、発売は1992年のはずだし、USB規格に至ってはさらにずうっと後。薄すぎるHDDの仕様も謎だし、1990年ではいかにCIAでも非接触データコピーはまだ無理でしょー。
もちろん「あの世界」でのPC事情まではわからない。別の技術発展をした時空なのだとしても、その技術背景について感じさせる描写もなく、デジタル関連についてはちょっとテキトーすぎという印象を受けたのは事実。
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