漫画原作は既読だが、J系俳優による実写ということで劇場はスルー。今回期待せず見たが悪くないじゃん。オープニングからのファブルの視線描写は惹きつけられたし、タイトルの入れ方もうまい。スタッフリストを確認すると、江口カン監督ってCMディレクターで活躍されていた方なんだ。なるほど、間違いなく邦画では観なかった映像感覚だと思う。文字表現に頼らなければもっと良かった。
ストーリーは大幅に単純化され、砂川や小島の非人間性の描写までは届いていないが、まとまりは悪くない。原作のとぼけたテイストをうまく落とし込んで、ケレンみたっぷりのアクションもなかなか。
佐藤二朗の存在が大きいが、原作のエッセンスを映した各キャラクターの反応も楽しい。冒頭でも分かるが、ファブル佐藤アキラは原作より少しだけアクティブに寄せているようだ。もうひと味サヴァン的なキャラ付けが欲しかったと思うし、妹ヨーコにはもうちょっとハジけてもらいたかったが、トータルではオフビートな笑える裏社会アクションとでも言える仕上がりだと思う。
惜しむらくはクライマックスの大乱戦。ジョンウィック狙いなのか、単に賑やかしたかっただけなのか、モブが多すぎて、ファブルのプロらしいクレバーなバトルがガシャガシャになってしまったのは残念。都市伝説化されるほど絶対的評価を持つ殺し屋を表現するなら、ここは冒頭の視線描写からさらに一段二段エスカレートした描写を持ってこないとイカンだろう。
基本裏社会モノなので、ヤクザ、チンピラのリアリティが求められるが、その点ではなにより柳楽優弥が完全に喰っていた。むしろ安田顕がこれまでになく大人しいのが意外。殺し屋・福士蒼汰はまだしも、向井理にヤクザ役は無理っぽい。
