nero

デッド・ドント・ダイのneroのレビュー・感想・評価

デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)
3.5
ちょ、ちょい待て! トム・ウェイツどーした? 随分ふくよかになったんじゃね? 一瞬わからなかったよ。アダム・ドライバーとかビル・マーレイとかティルダ・スウィントンとか結構な豪華キャストだったんで気が付かなかったが、最後まで生き残るってことは、もしかしてトムあんたが主役? そりゃあチキンは旨いさ。

舞台はCentervilleといういかにもどこにでもありそうな田舎町。人間のいーかげんなエネルギー開発のために地球の自転軸がズレ、月の自転速度まで変わって世界中でゾンビが墓から蘇るって、そこからすでにムチャクチャ。
ゾンビ映画ではあるけれど 完全にジャームッシュのおふざけとしか思えん。たしかにテンポやリズムはジャームッシュいつもの映像散文詩風だけど、芸風変わった? オチもあるようなないような、脳天気なカントリーのテーマソングが繰り返され、(ロニーが冒頭で”テーマソング”という意味が後半でやっと分かる) ”After life is over,the Afterlife goes on” って分かるような分からないようなリフが耳に残る。
住民は襲われて順にゾンビとなり、皆なにかに執着して街をさまよう。coffeeにお菓子にシャルドネにファッション・・・走らないけどぶつぶつつぶやくゾンビ。スマホの画面を光らせながらwifiを求めてうろつくゾンビって新鮮な映像だったぞ。

”The Dead don‘t die” と言いながら、首チョンパされたゾンビは復活してこない。黒灰化までわざわざCGで作ってるが、あれってサノスの指パッチンとは関係ないよねえ。クリーブランド(?)からやってきた若者3人も、キラーンと光らせといてなんにも見せ場なし。諸々もろもろ・・・たぶん現代社会へのメタファーとかいろいろ小ネタ打ち込んであるんだろうがろくに分からんわ。あ、ジョージ・A・ロメロへのリスペクトは十分に感じたぞ。ホムセンはお約束ね。

ロニーとクリフ署長の最期を見ながら感じたのは、「これって『生物都市』(by諸星大二郎)じゃん」って。新たな生命形態を獲得して変化した世界を生きていく・・・・それもアリ(笑)という肯定の物語。 ボブと子どもたちの行く末が漫画のラストシーンに重なって見えた気がしたよ。

ところで、やっぱり異邦人の葬儀屋ゼルダ(というか完全にティルダ・スウィントンそのもの)の存在感がめちゃくちゃ可笑しい。直角Walkが最高! 日本刀で無双ぶりを見せつけ、StarWarsは名作と褒め、真っ赤なSmartでふらふら走り、特に状況を変えることもなくクラシックな円盤で去っていく・・・完全にヘンだよ(笑)。
うん、この一本嫌いじゃないぞ。
nero

nero