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エジソンズ・ゲームのneroのレビュー・感想・評価

エジソンズ・ゲーム(2019年製作の映画)
3.0
子供の頃からエジソンの伝記は随分読んできた。偉人とされながら性格的にかなりアブナイ部分が多かったとも聞く。生い立ちからも承認欲求の強い人だったんだろう。それゆえか他者との競争心は強烈だ。一方のテスラは完全な孤立天才型、ひたすら理想を追求し未来を思い描いた。

19世紀末、蒸気・ガスから電気へと、新世紀へ向けてエネルギーの覇権を争う発明家・事業家達。原題からも、有名なエジソンとテスラの直流/交流の争いが主だろうし、産業発展史としても非常に興味深いテーマだったので期待したんだが、映画としては完全にビジネス興亡記という視点が中心で、かなりコレジャナイ感。

たしかにJPモルガン/エジソンのGE陣営VSテスラ/ウェスティングハウス陣営という図式ではあるが、ポスターにはエジソンとウェスティングハウスだけだし、最終的には政治的な力関係だったりするわけで、最後は二人の和解(?)で幕を閉じる。こちらが勝手にエジソンVSテスラの技術系対決を期待しすぎたためだろうか、なんだかモヤモヤ。もっと技術寄りの視点で描いてほしかった。
エジソンの動物実験に対抗した、有名なテスラコイルの公開実験(あの写真は合成らしいが)について全く触れてもいないのは解せない。ウェスティングハウスとの会話で、テスラは無線送電の可能性にまで言及しているのに、彼が想定した世界システムに触れることもなく、タワー模型をちらりと映すだけって・・・。一方で電気椅子についてはクドいほど描写される。なんとももどかしい。

映画としてはやや焦点がボケたものとなってしまっているが、キャスティングは素晴らしい。エジソン、テスラ、ウェスティングハウス、モルガンとそれぞれの存在感は見事。特にウェスティングハウスの人物像は出来過ぎじゃないかとも思えるが、紛れもなく本作の中心軸となっていた。勝者でありメディアや原発まで支配して米国を席巻したはずの彼の名も、いまでは一部の家電ブランドに残るだけ・・・嗚呼栄枯盛衰諸行無常。

エジソンとテスラ二人の発明家の理想こそ、科学・産業の発展に不可欠であったことは間違いないだろう。もちろん周辺技術の成熟もあってのことだが、現在では直流送電が見直されて来ている。そこまでは触れてほしかったかな。例によって失礼極まる邦題でプンスカ!
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