小

エル ELLEの小のレビュー・感想・評価

エル ELLE(2016年製作の映画)
4.0
好き嫌いがはっきり分かれそうで面白そうということで、オジサン映画同好会鑑賞作品に選定。しかし、「うーん、良くわかんないや」と全員撃沈。自分的には精神的に死んだも同然の人間が生き返る物語かな、という気がしたけれど、釈然としない。

映画評論家の方々の評価は高い模様。ということは作家性ですかね、と思い、ポール・バーホーベン監督についてググッて、考えて、ハッと思った。この映画の主人公、イザベル・ユペール演じるミシェルってバーホーベン監督の『ロボコップ』の主人公マーフィと同じじゃないの?

バーホーベン監督ってエロ、グロ、バイオレンスといった過激な表現を好みながらも、人間の尊厳みたいなことをキッチリ描くことで、評価が高いらしい。監督のことを知らない私でも知っている『ロボコップ』はラストの一言がすべてを語る、サイボーグにされてしまったマーフィーのアイデンティティー奪還の物語。

それじゃあミシェルってどうなのよといえば、覆面姿の男にレイプされるという普通の人なら決してまともではいられない状況にもかかわらず、何事もなかったように平然としている一方で、レイプ犯を敵として、反撃の準備を着々と進める。しかもいつもほとんど表情が変わらない。これって行動がプログラムされたサイボーグそのものじゃないですか?

ミシェルがこんな風になったきっかけは、父親の逮捕だろう。とんでもない殺人鬼の彼が逮捕されたとき、10歳のミシェルはニュース映像に映ってしまった。世間から攻撃を受けたであろう彼女は自らを守るため、精神をサイボーグ化していったのだと思われる。

もちろん人間としての精神がなくなったわけではなく、一人息子のことや別れた元夫の恋人のこと、母のこと、父のこと、そして近所の気になる銀行員の男のことで心が揺らぐ。サイボーグの精神と人間の精神が、ミシェルの中でせめぎ合っているのだけれど、ある日、そのミシェルでも驚くべき事実が判明すると人間の精神が大きく揺れ動き、サイボーグの精神にひびが入る。そして、母のため仕方なくとった行動がさらに追い打ちをかけ、サイボーグの精神がかなり崩れてしまう。

その後、CEOを務めるゲーム会社のパーティーでのシーン、それに続くシーンは、これから人間の精神を前面に出して生きるため、サイボーグの精神下で始まった腐れ縁を清算したという感じ。人間の精神が優勢になった彼女はハッピーエンドに思えるけれど、どうだろう。

鑑賞後、結構考えた後に思いついたことなので、確かめるためもう一度見たかったのだけれど、他に見たい映画もたくさんあるから、とりあえず書いてみた。自分的には納得できたけれど、多分、どこかに粗があり、考えが変わってしまうかもしれないけど、それはビデオでのお楽しみにとっておこうかと。

●物語(50%×4.5):2.25
・自分的解釈が当たらずとも遠からずなら、結構好きかも。

●演技、演出(30%×3.5):1.05
・イザベル・ユペール、演技は凄いと思うけれど、64歳でモテモテって、さすがにどうなのよ、と?

●画、音、音楽(20%×3.5):0.70
・美しく、スリリング。
小