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マンチェスター・バイ・ザ・シーのYYamadaのレビュー・感想・評価

4.0
みんなで観よう【みんかい?】指定作品
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

◆製作国: 🇺🇸アメリカ
◆製作年: 2016年
◆ジャンル: 人間ドラマ
◆受賞歴:
・ 第74回ゴールデングローブ賞
 主演男優賞(ドラマ部門)
・第89回アカデミー賞
 主演男優賞、脚本賞

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・アメリカ、ボストン郊外で便利屋として生計を立てるリーは、兄ジョーの訃報を受けて故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーに戻る。
・遺言でジョーの16歳の息子パトリックの後見人を任されたリーだったが、故郷の町に留まることはリーにとって忘れられない過去と向き合うことでもあった…。

〈見処〉
①癒えない傷も、忘れられない痛みも。
 その心ごと、生きていく…。
・『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(Manchester by the Sea)は、2016年に製作された人間ドラマ。監督は『ギャング・オブ・ニューヨーク』の脚本家ケネス・ロナーガン、アフレック兄弟と所縁の深いマット・デイモンがプロデューサーを務める。
・本作はボストン郊外の田舎町、マンチェスター・バイ・ザ・シー(海のそばのマンチェスター)による曇り空と暗い海の淡い殺風景と、心を閉ざして孤独に生きる男が、甥の面倒を見ながら過去の悲劇と向き合っていく姿を対比させて描く珠玉の作品。第89回アカデミー賞では作品賞ほか6部門にノミネートされ、主演のケイシー・アフレックが主演男優賞、ロナーガン監督が脚本賞を受賞している。

②ケイシー・アフレック
・3歳違いの著名な俳優ベン・アフレックを兄に持つ、本作主演のケイシー・アフレック。兄よりも端正な顔立ちながら2人のキャリアは、まるで「ヒマワリと月見草」。本作の主人公リーと同じような境遇を歩んできたバイプレーヤー俳優である。
・ケイシーのキャリアは古く、20歳のときに『誘う女』(1995)で映画デビュー。『チェイシング・エイミー』『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』『200本のたばこ』では兄アフレックと共演を果たしている。
・続く『オーシャンズ』シリーズでは本作プロデューサーのマット・デイモンと共演するなど、長く助演キャストを温めてきたケイシーに陽の目があたったのは、ブラッド・ピットと共演した『ジェシー・ジェームズの暗殺』(2007)。本作ではアカデミー助演男優賞にノミネートされ、トップ俳優としてのポジションを掴みかける。
・しかしながら、当時の妻サマー・フェニックスの兄を主演に据えた初監督作品『容疑者、ホアキン・フェニックス』では、公開直前までフェイクドキュメンタリーと明らかにしない奇行演出から、一時的にハリウッドから干され、低迷期を味わうことに…。
・本作にて第89回アカデミー賞主演男優賞を受賞したときに見せたケイシーの涙は、本作同様に彼の再生を現したものであろう。
・ちなみに2018年にはケイシーの過去の性的暴行疑惑が問題となり、再度のホサレ気味ポジションに甘んじている。高学歴のトラブルメイカー俳優である点はまさに兄譲り?

③結び…本作の見処は?
◎:「心に負った傷は簡単に再生しない」。少しづつ甥のパトリックへ歩み寄ろうとするリーの葛藤に対して、映画らしい演出は排除し、物語の序盤と終盤に同じようなトラブルを描くことによって、時間の経過だけが再生する手段ではないことを現している。劇的な変化を示唆しない稀有な作品。
◎: 終盤に訪れる、ケイシー・アフレックとミシェル・ウィリアムズによる野外の会話劇。抑えた感情が決壊したようなアカデミー受賞俳優同士によるレベルの違う演技合戦は、映画愛好家必見の名シーン。
▲: 時系列を崩したシーン構成以外、映画作品としての演出は極めて「薄味」。過激演出という「スパイス」に慣れた鑑賞者には、鑑賞時間が長く感じてしまうはず。まるで (ケイシーが出演した)『インターステラー』の世界のような体感時間の揺らぎを感じないように、飲酒しながらの鑑賞をしてはいけない。
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「良いのはわかっていながらなかなか手を出せない作品」。案の定、寝落ちの連続で、鑑賞には随分期間を要しましたが、予定調和にない良質のドラマに大変感動しました。
本作の鑑賞機会を与えてくれました「みんかい?」選作者のHariganeさんに感謝!!
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