Filmoja

ウインド・リバーのFilmojaのレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
4.5
アメリカ・ワイオミング州の雄大な雪景色の下、先住民居留地(ウインド・リバー)を舞台に繰り広げられるクライム・サスペンス…と単純にはカテゴライズできないほどの、重厚な人間ドラマに圧倒された。

実話ベースなのでシナリオは非常にシンプルなんだけど、大げさな脚色を排し、ひたすら人物描写に徹することで浮き彫りになっていくそれぞれの閉塞感、絶望感、孤独感、やり場のない怒りが折り重なり、さらけ出される感情に否応なく引き込まれてしまう。

ショットガンで獲物を撃ち抜くハンターを演じる、ジェレミー・レナーの静かで抑えた演技が素晴らしく、過去に傷を抱え、苦悩する男を見事に演じているし、最初は戸惑いながらも、芯が強く、気丈にふるまおうとするFBI新人捜査官を演じるエリザベス・オルセンとの再共演が味わい深く(しかも役名がバナーって)、マーベルファンならニヤリとさせられる。

特に大がかりな仕掛けがあるわけでもなく、意外にあっさりと真相が明かされるものの、淡々とした展開から一転、そこに至るまでの様々な葛藤を一気に集約させ、悲劇的な結末に持っていく演出には胸を揺さぶられた。

人間は弱い。だからこそ、もがき苦しみながらも諦めずに生き抜くことでしか報われない。自己都合で弱者を虐げ、有無を言わせず破壊する、あらゆるものに対して必死で反旗を翻す、不屈のメッセージに打ちのめされる。
おれは?おまえは?同じ立場に立たされたらどうするんだ?

暗闇の中で最後の一瞬まで強く生きることの意味を、深く考えさせられる衝撃作。
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