Filmoja

SING/シング:ネクストステージのFilmojaのレビュー・感想・評価

4.0
豪華キャストと豪華ヒット・ソングで贈る、コミカルなアニマル・ミュージカル第2弾を、吹替版で娘と鑑賞。

前作でのドタバタなどんでん返しの劇場再建を経て、今作ではラスベガスを模したレッドショア・シティが誇るクリスタルタワーシアターでのショー成功を目指す物語は、良くも悪くもストレート。

バスター・ムーンの夢まっしぐらな行きあたりばったり感は健在だし、ステレオタイプ過ぎる悪役を担う興業主のオオカミ、ジミー・クリスタルや、何かと引っかき回す娘のポーシャ、長らく隠遁生活を送っていたロックスターのクレイ・キャロウェイなどなど…新旧キャラを交えて描かれる物語は、ただひたすらにポジティブ(と少しのセンシティブ)だ。

女性差別やパワハラ、職権濫用、業界の悪しき慣習など、しつこくならない程度にさらっと触れられる点を除けば、前作同様、あくまでファミリー向けアニメの域を出ないのは仕方ないとしても(ディズニー/ピクサーとのクオリティの差よ…)、シーンを彩る新旧多彩な楽曲群がテンポ良くつないで飽きさせない。

前作に引き続き吹替声優陣も違和感なくハマっていて、いつも聴いていた洋楽が日本語詞で歌われるのは不思議な感覚だったけど、それぞれの良さがにじみ出る個性あふれる歌唱とパフォーマンスには、胸が熱くなる。

そして、やはりU2。
2006年のヴァーティゴ・ツアーと、13年ぶりに開催された3年前のヨシュア・トゥリーツアー2019の来日公演を体験した身としては、アリーナでの、あの臨場感、高揚感、多幸感を再び呼び覚まされるクライマックスの熱唱シーンは、感涙ものだった…。

クレイ・キャロウェイを演じる稲葉浩志(B'z)のハスキーな話し声と、おなじみのハイトーン・ヴォーカル。アフレコへの真摯な姿勢と、バンドへのリスペクトが伝わる熱演に万感の想い。

原曲が素晴らしいのはもちろんなのだけど、歌がメインのアニメ映画でここまで楽曲の素晴らしさを再現した作品は、これまでなかったのではないか(字幕版だと、アッシュを演じるスカヨハの歌うStuck In A Moment〜や、クレイの声優をつとめるボノ本人との共演など、これまた感涙もの…)。

前作に比べて、ひねりのないご都合主義的な展開や、時代にそぐわない勧善懲悪的な描写には目をつむり、歌そのものにフォーカスすれば、こんなにも心を震わせるシーンは他にない(もう全曲U2でも良かった笑)。

鑑賞後は、娘も感動した様子でキラキラ笑顔に。父娘でU2を疑似体験できただけでも、パパ感涙です(何度目だ)。
若い世代や映画ファンにも、U2の楽曲に触れるきっかけを与えてくれたイルミネーションに感謝!


エンディングで流れる、本作のテーマを象徴するようなYour Song Saved My Life。

“ 君の歌が僕を救ってくれた
人生で最悪の日も 最高の日も
打ちひしがれてた心のドア 今は開いてる
君の愛が僕を生かしてくれるんだ ”

誰しも感じたことがあるような、心に抱える歌への想いを、こんなにも素直に率直に表現できるボノとU2に、改めて出会えた奇跡に感謝したい。

https://youtu.be/slWABi9zno8
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