140字プロレス鶴見辰吾ジラ

マリアンヌの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

マリアンヌ(2016年製作の映画)
3.5
”困り顔のブラピ”

予告編でアクションやサスペンスを想起させる仕様にしたことが効果的ではなかった作品。実際、ベクトルとしては「ロマンスに影を差す疑心」が推進力になっている。前半は「007シリーズ」でお馴染みのワンアクション仕掛けるところをフランスの趣ある街中で出会うというセッティングを優雅に行うあたりの力作感が伝わってくる。ちょうどランニングタイムが半分に到達するところを見越しての潜入→爆破→銃撃戦と小気味良く展開。第二次大戦中のレトロな機関銃とレトロの車での逃走劇。そして愛し合い、空爆下の出産シーンなど矢継ぎ早に繰り出したのちの妻のスパイ容疑を告げられる主人公。前半のセッティングをゆったりとさせた分のサスペンスとしてのスリル感と、マリオン・コティアールの演技の不穏さのスイッチが入っていく流れは綺麗だった。ホームパーティの視線や華やかなジャズミュージックに影を落とす疑念の矛先など楽しめる要素も多く、スロースタートながらグイグイ引き込まれていくものの、クライマックスの着地点における逃走劇のようなアクション含むカタルシス要素が少なく、泣かせようとする力作の力みのようなものを感じ失速というのが素直な感想。それでも「この世界の片隅」にもあった戦時下の市井の人々と空襲シーンの、CGでデコレーションされたファンタジックな絵ながらも、華やかさx影の本作におけるベクトルが乗ったシーンは目を見張り、遠雷を想起させながら不穏かつおとぎ話的なぐらつきのある空襲シーンは印象的だった。