ヨーク

メリー・ポピンズ リターンズのヨークのレビュー・感想・評価

3.7
前作の『メリー・ポピンズ』は観ていないので細かい小ネタとかは分からなかったがそれでも面白かったと思う。
しかしこれは祝祭的な映画だったなと思う。祝祭といえばこの映画には何の関係もないが俺は『メリー・ポピンズ リターンズ』を観る前日にNetflixで『FYRE』というドキュメンタリーを観ていたんだけどこれが実に面白かった。『FYRE』はカリブ海の島を舞台にしたフェスに小金持ち達を胡散臭い空虚な宣伝で釣り上げて一儲けしてやろうという目論見が木っ端みじんに砕かれるまでを描いたドキュメンタリーなんだけど、人間の虚栄と虚飾と往生際の悪さが現れまくっていて最高に笑えた。そういう人間の無様さと『メリー・ポピンズ リターンズ』をなぜ同列に並べるかというと前述した祝祭というキーワードが引っかかったからです。
カリブ海の島を貸し切って食って飲んで踊って遊び明かそうぜというFYREフェスのコンセプトは空虚で実に刹那的な快楽主義だがそんなの楽しいに決まってる。誰だってそんな風に遊びたいだろう。まさに祭り。『メリー・ポピンズ リターンズ』もそういう意味ではコンセプト的にはFYREに似ていると思ったのです。ネタバレは避けるがこれストーリー自体は40~50分もあれば十分描き切れるくらいの内容で、ミュージカルだからとかそういうの抜きにしても物語としては薄味だったと思う。じゃあ残りの時間は何してたんだというと歌って踊ってたんですね。素敵なビジュアルで飾りながらも中身がないならFYREフェスと一緒じゃん、ということになりそうなんだけどそこはもうエンターテインメントとしての完成度が本当に天と地くらい違っていて個人的に前日鑑賞したFYREフェスの体たらくとの落差に呆然としました。
FYREフェスは祝祭を夢見ながらも余りにも祭りというものを舐め過ぎていた。同じアホなら踊らにゃ損なのが祭りだがその祭りを現実のものとして運営するためには煩雑な事務手続きや蓄積されたノウハウや開催する地元との連携が不可欠なのだ。FYREフェスにはそれが全くなかった。だが『メリー・ポピンズ リターンズ』にはエンタメに対する敬意やどうすれば観客が楽しんでくれるだろうという試行錯誤が随所に感じられた。
少々乱暴だが祝祭=エンタメとくくるならば『メリー・ポピンズ リターンズ』は祭りを舐めていない。重厚なテーマとかはなかったかもしれないが全力で大人も子供も楽しめる映画を作り上げていた。
というかあのラストシーンは大人の方が効くよな。そこら辺は前作を観ている人ならもっと感動的だったんじゃないかなという気がする。可能なら前作を予習してから観た方がいいかも。
面白かった。
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