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哭声 コクソンのumisodachiのレビュー・感想・評価

哭声 コクソン(2016年製作の映画)
4.8
韓国では700万人が観たらしい。大ヒットだな。

サスペンスかと思ったら、思いっきりオカルトホラーだった。しかも、キリスト教系オカルトホラー。

韓国の一流俳優たちに交じって、謎の日本人を演じている国村隼の存在感は圧巻。謎の日本人、やたら男前の祈祷師、謎の白い服の女という3人の登場人物が物語の鍵を握るのだが、この3人についての解釈は観る人によって変わってくるはず。

この監督は、[足し算]型だ。スタイリッシュなんてくそくらえ。プロットに対して、あらゆる要素をこれでもかと盛り盛りに入れてくる。よって、笑いも恐怖も何もかものが過剰になり、悪趣味スレスレの独特すぎる世界観が画面いっぱいに漲ることになる。

本作のように宗教的テーマやメタファーが散りばめられた作品の場合、こういった監督の[足し算]作戦は、観客を撹乱しまくる。

本作に至っては、ミスリードに次ぐミスリードと、祈祷シーンに代表される異様にハイテンションなシーンとが、観る側の判断能力を意図的に奪ってくる。疑問と恐怖と不安と興奮と笑いとが、同時に襲ってくるのだ。

こんな映画、観たことない。そして、こんな映画が大ヒットする韓国は凄いとしか言いようがない。

「信じること」「決めつけること」といったテーマに対して、これだけのパワーとボリュームをもって臨むこと、どう考えても常軌を逸している監督の世界観に、一流のスタッフとキャストが全力で応え、なおかつそれを多くの国民が受け入れたこと。

映画というものに対する気合いが、根底から全く違うんだなと思わずにはいられない。ツンデレだとか壁ドンだとか号泣だとか、そんなことばっかり言っている場合じゃないよ、日本。


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