とりん

ディストピア パンドラの少女のとりんのレビュー・感想・評価

3.5
2023年10本目

以前から名前は知っていたものの、あやのから紹介されてチェックしてた作品。
どこかで知っていた気はするけれど、ゾンビ映画だということに驚いた。
そこにうまくパンデミック後の世界観も映し出していて、雰囲気としては悪くなかった。
第二世代の子たちは何かしらの抗体を持っていて、それがワクチンの兆しになるということで、どこまで人間に近づけるか隔離実験をおこなっているところから始まる。
これまでもありそうな設定ではあるものの、なかなかに面白い着眼点。
ゾンビものとしては陰湿な実験場の雰囲気が珍しく感じたが、結構早めにバリケードも決壊して、安全な場所を求めて彷徨う旅となる。もう少しあの実験室の雰囲気は続けて欲しかったし、どういう風に人間に近づけようとしていたのか、あの実験はどういう意図があったのか、学習をさせたかったのか、彼女たちがワクチンの元となる実験体なのはわかるが、そういう部分をもう少し掘り下げて欲しかった。
旅に出てからはメラニーを元々実験体で人間とした扱わなかった人たちと心を通わせていくシーンもある。メラニーからも歩み寄っていく。メラニー自体がかなり特質で、頭の良さももちろんだし、学習能力の高さ、食欲の制御などこれまであまり観られなかった進化の方向性を見せてくれた。猿の習慣とも取れるボスのやりとりなんかもあった。時間とともに知性を持ち、武器を使ったり、言葉を通わせたり、群れや集落を作ったりというのはこれまでもあったが、今作のこの見出しかたは面白い。さらには共生というところで、木や空気と共生し、新たな進化をも遂げようとしているところも垣間見られた。ただこちらも説明不足だし、最後にメラニーが種を割った意味も良く分からなかった。メラニーはあの子どもたちも自分と同じように成長させ、実験体の要素となり得ることを言いたかったのか。それはあの種を割って飛び散った細菌でも第二世代は生き延びることができることを証明したかったのかな。きっと頭の良いメラニーだから、ワクチンのためにと考えたのだろう。もちろん自分は生き残る前提で。
終わり方もそこまで悪くはなく、あれがあったから先の考察もできたところはある。暗い感じにもなりすぎず、かといって希望に満ちているわけでもない、これからの共生と言ったもころも感じられるラストだったかな。
全体的に設定は面白く、原作があるからここまでしっかりしてるのかな。もう少し上手く描けていれば、かなり化けた作品になった気がする。
とりん

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