140字プロレス鶴見辰吾ジラ

RAW〜少女のめざめ〜の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)
3.8
”Red like roses”

冒頭の田舎道の事故シーン。
ググッと画面に引き込む引きのショットが憎い。

映画祭にて”失神者続出”との謳い文句に必要以上の緊張感をもって踏み入れた”RAWの世界”なわけですが、ホラーとコメディの緊張と緩和のシーソーゲームが痛快であり不快な映画。

「震える舌」や「エクソシスト」のような常軌を逸したシークエンスの成長や病的な感覚を落とし込むにおいて変化球でなく直球を潔く放ってくれる分、エンターテイメントとしての親切性ある。

ニコラス・ウェンディング・レフン監督の「ネオンデーモン」のように瞬間的にスイッチが入る爆音の音としての明滅や、初めてAVを見たときの男女の獣のようなファックが、メタファーの気流に上手に帆を張っているイメージ。ただ上記作品のような哲学的や芸術的な感覚よりも、少女の成長や姉妹愛、そして人を愛することへ昇華を、オカルティックな継承モノとしてステップを踏みつつ構成しているのは好感触。

作中のセリフがしっかり韻を踏みながら小気味良い伏線回収を小マメに行っているので、クライマックスのある家族の食事のシーンで、全部つながったと思える痛快さがあるので、エモーションの最高潮を幕引きと見事にシンクロさせてスタンディングオベーションが起きたこともうなずけるラストを演出していた。

主人公が初めて肉の味を知ってから、人肉にたどり着くまでの肉体的成長を丁寧に見せた後に、ある人肉の部位を食すシーンのBGMの盛り上がり方はジェイク・ギレンホールの怪演が記憶に新しい「ナイトクローラー」の高揚感ある撮影シーンを髣髴とさせた。その後に垣間見せるコメディックなシーンの落とし方も素晴らしいし、その顛末も序盤の母親の過保護さと姉の心情、冒頭シーンの意味づけも踏まえ納得感を生み出していた。

心底不快でありながら、キャットファイトにすら愛情の片鱗すた感じる痛快性、色の交わり、男女の野生的交わりなど、高揚感を帯びさせる説得力のあるストレートなエンターテイメントだった。

ストロベリーサンライズだね!