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RAW〜少女のめざめ〜のSameのレビュー・感想・評価

RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)
4.0
神童と呼ばれ、親に過保護に育てられたベジタリアンの少女は、姉も通う全寮制の獣医大への入学を機に、大人の階段を登りながらカニバリズムに目覚めていく、と言うお話。

いやー凄かったー!
主演のギャランス・マリリアー頑張りましたね。鬼気迫る素晴らしい演技で、思春期の自分が何者なのかわからないという葛藤をほんと上手く演じてました。
ほんとこの生々しい感じってフランス映画っぽいよねー。フランス人て性に奔放よね笑

誰もが通る大人になることへの憧れ、思春期の苛立ちや痛み、集団生活の中でどんどんわからなくなってしまうアイデンティティー。
少女が大人の階段を登っていく成長の物語を、人肉への渇望というタブーを犯す行為を交えて血生臭く描いた良作でした。

そうそう、なんか思春期って血なまぐさいんだよね笑




この先はネタバレで書きますので未見の方はご注意ください







この映画における食人行為は、性欲や欲求に忠実になっていくことのメタファーとして表現されています。

ベジタリアンで神童と呼ばれていたのは、カニバリストな母の血を発現させない為に、親が必死に押さえ込んだ証拠。

大学には色んな人間がいて、出来のいい生徒に意地悪なことを言う厄介な教授もいて、先輩たちの度を越した洗礼を受け、真面目で、勉強が出来れば評価されてきた自分の価値観がどんどん揺らいでいきます。
そして、先輩たちの洗礼の儀式の1つとして無理やり食べさせられた(姉によって)うさぎの腎臓。

それを口にしたことで、体に発疹がでて文字通り全身の皮が剥けます。これは当然一皮向けたと言うことですね笑
ここから肉食への渇望が発露していくのです。

この映画のキモは大人の階段を登っていく道先案内をしてくれる姉の存在。
実家にいた頃とうって変わって、奔放に振る舞う姉。そんな姉は本当の自分を見つけるための手助けをしてくれるめちゃくちゃ優しい妹想いの姉でした。
カニバリズムのやり方もちゃんと教えてくれる優しいお姉ちゃん笑
最後は、身を滅ぼす姿を見せて、妹の暴走を抑えようとしたんだろうと思っています。まあやっちまったのはお姉ちゃん自身の問題なんだろうけど。

くそまじめな少女が、親元を離れて遊びとかセックスを覚えていくんだけど、いきすぎたら身を滅ぼすよーみたいな。大人になるための通過儀礼の映画。
要約すると結構ありきたりな青春ものなんだけど笑、カニバリズムを交えて面白い映画になってましたよ。

お姉ちゃんの指をむしゃむしゃするシーンはちょっと目を背けたくなる生々しさだったー、あのシーンは最高ですね。

最後はどうだろう、口元の傷跡だけで十分だったな。服を脱いでどやー!みたいなのはいらなかった。もうわかってたし。
いや、個人的な好みで言えばそもそも食人への渇望は母譲りの血のせいでしたーってネタバラシみたいなのは必要なかったかもなあ。その方が一過性の思春期の病みたいな風にも取れたし、でもお父さんの唇には昔噛みちぎられたような傷があってみたいなのがゾクッとしたかも。

ワールドカップのフランスvsベルギーを見た後にこれを見たのですが、この映画の大学寮の伝統儀式を見て、こんなにひくほど度を越してアホみたいに騒ぎ倒す暴力性を秘めた奴らにはなかなか勝てないよなあとか思ってしまった。パワーが違うわ。
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