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スプリットのLudovicoMedのレビュー・感想・評価

スプリット(2017年製作の映画)
3.7
『衝撃のラスト』の呪縛に囚われ続けているMナイトシャマランがついに、ケヴィンファイギばりのあの構想に手を出した。

自分含め、多くのシャマラニストはこのラストに歓喜したことでしょう。
正直、全く予想してなかった点でシックスセンス以来の、衝撃というよりは『最高』のラストを体験できた。

シャマラン作品として観た場合、本作は申し分ないほど大満足できた。シックスセンス、とまでは行かないが、アンブレイカブル、ヴィジット並みのシャマランホームラン作の傑作です。


サイコのような多重人格+監禁脱出物ということで、シャマラン好きでなくても十分楽しめるキャッチーな題材で、珍しくどストレートなメッセージ性と本作のジャンルの必然性など、ラスト以外は誰でも一定量の楽しみを得られるエンタメ作品に仕上がっている。
ナルシスティックな作家性が前面に出ている、よく分からない歪な監督作の中でも、万人にオススメしやすい。

幼少期のトラウマを持つ、実質主人公的存在のケイシー。
彼女の主観で物語は運ばれ、内に閉じこもる彼女が『檻の中』で、自分の中の傷や苦悩と向き合っていき、鏡像関係を通じて成長をしていく。
シックスセンスやヴィジットと同じ、登場人物の苦悩やメッセージを見せていき、演出力も磨きがかかり、サスペンスとしてかなり秀逸。

もちろんジェームズマカヴォイの曲芸を堪能する映画ではありますが、ケイシーの表情で感情の変遷を表すと同時に、何かを抱えてるミステリアスな人物を体現しきっている。

シャマランは過去にヒーローを描いた作品があるが、それと対比するなら今回はヴィランの誕生譚。
恐らくこの部分が賛否分かれてくると思いますが、どちらかというと、ケイシーとの対比対象としてマカヴォイの悪役キャラは優れていると思う。

そしてマカヴォイのキャラを表すようなオープニングタイトルも工夫を凝らしている。
ヒッチコック風の文字の動きを高揚感と楽しさに乗せたグラフィックな構図のデザイン、EDではまた違った楽しさを提示してくれる点において、個人的にガン上がりした。

しかし忘れてはならないシャマラン映画ともあって、冷静な顔して観てると、アレっ?て思う変な見せ場。
ジャンルがちょっとズレてる変なギャグ満載。
ドン引きのキスシーンからのあの一言、カニエウエストのくだり、動物ごっこ、ハルク化するマカヴォイなどなど、前作ヴィジット以上にツッコミたくなる場面は多いです。

しかしお馴染みのどんでん返し的な見せ場は、ちゃんと物語と絡んで機能しているため、後出しになっていない。

何よりシャマラニストに最高のサプライズを用意されて、よりシャマランを応援し続けたくなる一作です。
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