朱音

GODZILLA 怪獣惑星の朱音のネタバレレビュー・内容・結末

GODZILLA 怪獣惑星(2017年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

アニメのゴジラ映画シリーズを製作するにあたって、ここまでの思い切ったSF設定を取り入れたのは個人的になかなか良いアイディアだ思う。
今までにない新感覚のゴジラ映画だと感じたし、実写でやったらめちゃくちゃお金掛かる、もしくは安っぽくなってしまうであろう世界観やゴジラの途方もない強大さなど、アニメだからこその利点を存分に発揮出来る器になったのは間違いない。

一方で、怪獣を目の当たりにするその瞬間までの焦らし演出など、怪獣もの特有のお約束というものと、SF特有の説明的描写の多さとはひょっとして食い合わせが悪いのかもしれないとも感じた。

まず88分という尺に対して話のスケールが大きすぎで、筋運びもスムーズとは言えず、そこにもってSF特有の説明的描写(背景やそれまでの経緯を説明したナレーションや台詞であったり、ナビゲーターが数値や状況を都度読み上げるなどの)が加わって物語が動き出すまでのテンポが非常に悪い。
本作でいうと、例えば「ゴジラVS人類」の構図からはみ出た設定があまりにも不要で、特に余所の星から来たという2種族の宇宙人が、地球人類に高度な能力・技術を付与するための存在でしかなく、物語上の必然性が感じられないこと。
また登場人物が多く、それぞれの立場や階級といったものがそれなりに複雑な割にほとんど説明もないため、非常に把握し辛く、その役割、というか意味が薄いように感じられる。
例えば終盤、主人公が部隊の指揮を執る立場になるが、そもそもこの主人公が、ゴジラを憎んでおり、打倒する為の研究をしていること以外、それまで組織の中でどういった立場にいて、どんな仕事をしていたのかといった情報がまるでないため、つい今さっきまで手錠を嵌められてた人間がいきなり指名されたと思いきや、それはそれは見事な采配を振るい、仲間たちがこぞってそれを支持する描写に不自然な唐突さを感じてしまう。
そういったゴタつきなども相まって鑑賞中、物語的に有用と思われる事柄以外について割かれている時間、それが退屈に感じられた。

ゴジラの「生物としての有り得なさ」を表現したくだり、2万年後の地球の環境、勝つためのロジック、など興味深く楽しめた要素も決して少なくはなかった。

アニメーションについてはアクションにまつわる動きや演出はとても良かった。宇宙船をはじめとした様々なガジェットのデザイン・アートワークも申し分なく、ゴジラの硬くて重そうな質感なども素晴らしかった。
ただ人物についてはのっぺりしていて、実存感がないように思える。
声優陣は豪華で、どのキャラクターも違和感なく演じられていただけにそのアンバランスさが気になった。
朱音

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