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否定と肯定の小のレビュー・感想・評価

否定と肯定(2016年製作の映画)
3.8
実話に基づく物語。1994年、「ホロコーストはなかった」とする「ホロコースト否定論」を主張するイギリスの歴史家デビッド・アービングが、ユダヤ人女性の歴史学者デボラ・E・リップシュタットを名誉棄損で訴えた。リップシュタットが著書で、アービングの説を真っ向から否定したため。

イギリスでは訴えられた側に立証責任があり、裁判に勝つには「ホロコースト否定論」を論破する必要がある。彼女のために組織されたイギリス人大弁護団は綿密な調査に基づき戦略を練る一方で、リップシュタットにある要請する。

その要請が気に入らず、弁護士たちに否定的だったリップシュタットは…、みたいな感じで「ホロコースト否定論」と彼女の心情がかけられているようなタイトルなのかな。

裁判を映画的に盛り上げ、カタルシスを感じさせるのはさすが。ただ、大弁護団対アービング1人の争いはいわばプロ対アマチュアであり、リップシュタット側が優勢なのは間違いない。

そんなリップシュタット側にも弱点はあり、アービングはそこを虎視眈々と狙っている。弁護団はもちろんお見通しだから、リップシュタットにある要請をするのだ。

リップシュタットと弁護団の関係性って、自分の仕事上で似たような状況がしばしばあるから、とても共感して見た。彼女の希望を受け入れれば、彼女はスッキリ満足するかもしれないけれど、獲得したい成果は得られない。

だから本作の個人的見どころは、弁護団がリップシュタットとどう渡り合うか、だった。時に毅然と、時に優しく。自分達の仕事の成果を見せ、リップシュタットの信頼を得ていく弁護団。そして、お酒を片手に「腹を割って話そうや」みたいなダメ押しがハイライト。

サラリーマンの人間関係と同じじゃね? って感じ。あと、弁護団の論の詰め方も、できる人の仕事ぶりみたいで参考になる…と、映画を見ても息抜きにならない感想が中心になってしまう自分自身を『否定と肯定』どちらにするかと言えば、今日はちょっと肯定したい気分かな。

●物語(50%×3.5):1.75
・実話ものって盛り上げるのが難しい気がするけれど、まずまず頑張ったのではないかと。

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・主要キャストはみんな良かったのではないかと。

●画、音、音楽(20%×4.0):0.80
・映像が美しくてグッド。
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