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トゥルー・グリットのYYamadaのレビュー・感想・評価

トゥルー・グリット(2010年製作の映画)
3.6
~脱「勧善懲悪」の「新西部劇」~
【ネオ・ウェスタンのススメ】
 『トゥルー・グリット』(2010)

◆本作の舞台
 アーカンソー州
◆連関する時代背景
・1830年 / ジャクソン大統領による
  インディアン強制移住法の制定
・1838年 / チェロキー族の
  オクラホマ強制移住 (涙の旅路)
・1838年 / アーカンソー州
  フォート・スミスを先住民の監視砦に
・1871年/ フォート・スミス砦の廃止
  (町は以降も発展)
★1880年代 / 本作の舞台

〈見処〉
①コーエン兄弟×スピルバーグによる
 現在の「娯楽西部劇」
・『トゥルー・グリット』(和訳: 真の勇者)は、『ノーカントリー』のコーエン兄弟が監督・製作・脚本を務め、スティーブン・スピルバーグが製作総指揮を執った、2010年製作の西部劇映画。
・本作の舞台は1880年代のアーカンソー州フォート・スミス。14歳の少女マティ・ロス(ヘイリー・スタインフェルド)は、父を牧場の使用人トム・チェイニー(ジョシュ・ブローリン)に殺され、馬と金貨と銃を盗まれた。
・マティは父の敵討ちのため、元泥棒で大酒飲みでありながら腕利きと評判の保安官、ルースター・コグバーン(ジェフ・ブリッジス)を雇う。
・また、チェイニーを追うテキサス・レンジャーのラ・ビーフ(マット・デイモン)も仲間に加わり、彼らを信用できないマティも同行同行して犯人を追う旅に出るが…。
・本作は、ジョン・ウェイン主演の名作西部劇『勇気ある追跡』(1969)をリメイクし、「少女視点の物語に」「勧善懲悪の色を薄めた勧悪懲悪作品」と現代風の娯楽作品にアレンジ。スターキャストを配置した本作は、コーエン兄弟監督作では、最大のヒット作となった。

②保安官と賞金稼ぎ
・西部劇には欠かせない「保安官」。日本語では同じ呼称で括られているが、アメリカ開拓時代では、連邦政府から任命を受け裁判所の運営にあたる廷吏として、秩序維持や令状の執行、囚人の護送などにあたる「マーシャル」と、郡や住民に選出された、法の執行官「シェリフ」に大別される。
・また、西部開拓時代の最前線は実質的に無政府状態であったことから、開拓民は
銃の名手を雇うなど自警団を組織化したが、これらの用心棒もシェリフやマーシャルと呼ばれて、後々には、郡保安官の制度に組み込まれていった。
・本作でジェフ・ブリッジスが演じるルースター・コグバーン保安官は、アメリカ政府より任命を受けた由緒正しきUSマーシャル。
・しかしながら、本作の舞台であるアーカンソー州フォート・スミスは、オクラホマの先住民居留地と隣接した、「文明社会」と「無秩序地帯」境界線に位置。ならず者の犯罪者はオクラホマ居留地に逃走するため、この地帯には賞金稼ぎが多く、そのなかには、連邦保安官やdeputyと呼ばれる保安官補がその任務にも当たっていたようだ。本作で描かれているのは、当時のアメリカで最も、ならず者がたむろする地域であったと理解しておきたい。

③結び…本作の見処は?
◎:『ピッチ・パーフェクト』シリーズや『バンブルビー』などで活躍中の若手女優ヘイリー・スタインフェルドのデビュー作品。アカデミー助演女優賞にノミネートされた知的で凛とした演技には既に大物感が漂う。
○: 好き嫌いが分かれるコーエン兄弟監督作品であるが、純粋な娯楽作として、肩肘はらず鑑賞出来る。
○: 当時のフォート・スミスを模写したロケセットはなかなか大規模で、本格的な西部劇さながら。スピルバーグ製作総指揮による潤沢な資金も影響?
▲: 豪華キャストを配しながらも無難な作風は否めない。
×: ジェフ・ブリッジス扮するコグバーン保安官が、幼い先住民兄妹を何度も足蹴にするシーン。シャレの演出だろうがシャレになってない。
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