ひこくろ

真夏の素肌のひこくろのレビュー・感想・評価

真夏の素肌(2014年製作の映画)
4.2
二人の女の子の対比が見事だなあと思った。
実の娘の振りをして父親のセルゲイに近づくサーシャは、最初、ものすごく嫌な感じで登場する。
まるで王様のようにわがままで、自由奔放に振る舞う彼女は、周囲の人間に気配りをすることもない。
友だちと一緒に旅行しているのに、男をナンパして、いい感じになったら友だちを放っていってしまうような女として描かれる。
一方の本当の娘オーリャは、臆病だが父親との再会を望んでもいて、気持ちを打ち明けられないことに葛藤を抱えている。
地味で目立たないが、悩みながらもしっかりとしている、とてもいい子に見える。

その二人の関係性が、父親のセルゲイに対することで逆転していく。
たぶんオーリャに対する思いもあり、サーシャは親子関係を築き上げることに必死になる。
どんどんいじらしく、真剣で、かわいい女の子に変わっていく。
それに対して、オーリャのほうは、逆にサーシャへの憧れと嫉妬を爆発させてしまう。
自由奔放な姿にも、セルゲイと親子になっていく姿にも、耐えられなくなった彼女は自堕落に堕ちていく。

見ているのも不快だったサーシャが、いつの間にか純粋で一途なかわいい女性になっている。
真面目で応援したくなるような女性だったオーリャが、あまりにも痛々しい姿をさらけ出している。
親子になりたいと願ったサーシャと、親子の関係を壊したいと願ったオーリャ。
二人の対比と変貌を通して、親子とは何かというところまで踏み込んでいたのがまたよかった。
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