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こころに剣士をのkuuのレビュー・感想・評価

こころに剣士を(2015年製作の映画)
3.9
『こころに剣士を』
原題Miekkailija.
映倫区分G.
製作年2015年。上映時間99分。
製作国フィンランド・エストニア・ドイツ合作。

ソ連占領下で人々が鬱屈した生活を強いられた1950年代初頭のエストニアを舞台に、勇気を持って逆境に立ち向かおうとするフェンシングの元スター選手と子どもたちの絆を、実話に基いて描いたヒューマンドラマ。
監督はクラウス・ハロが務め、米アカデミー賞の外国語映画賞に向けたフィンランド代表作品に選ばれた。

エリート・フェンサー(フェンシング選手のこと)でありコーチでもあるエンデル・ネリス(モルト・アバンディ)は、1950年代初頭、スターリンの秘密警察を避けてレニングラードを脱出する。
18歳でナチスに徴兵され、ソ連侵攻後はナチスの制服を着ていた者はすべてシベリアに送られた。
彼はエストニアの小さな村でスポーツ教師として無名であることを望んでいたが、秘密警察はどこにでも目を光らせていた。
エンデルは恐怖の中で生活してて、村も同様で、男性のほとんどが二度と姿を現さないように闇に葬られている。
このパラノイアの中で、彼は伝統的な学問であるフェンシングのクラスを始めるが、彼の過去を調査する当局からはその取り組みが反感を買う。
一方、エンデルはロマンスを見つけ、子供たちは急速に成長し、やがてレニングラードでの試合に出場したいと懇願するようになる。
エンデルは、この子たちを連れて行ったら二度と帰れないかもしれないと思っている。

この物語の大きな強みは、撮影にあるかな。
バレエのような優雅さとスピード、そしていつ、どこで攻撃するかを正確に把握することを基本とした芸術を身につけていく子供たちを、カメラはフェンシングの授業の最中に見ている、魅せてる。
子供たちのコントロール意識の高まりは、スターリン体制下での生活におけるコントロールの欠如とは対照的やった。
エンデルが父ちゃんのような存在になると同時に、失うものも大きくなり、かつてのコーチに再び逃亡するよう促されながらも、エンデルは子供たちと開花しつつあるロマンスに感情移入していく。
エンデルが子供たちや恋人に接する様子をクローズアップしたいくつかのシーンは、時代の暴虐に抗う希望の詩的な描写となってた。
物語には2つのクライマックスがあって、どっちも心温まる感動的なものとなってましたよ。
村の子供たちは勇気を持って都会の学校と競い合い、フェンシングの試合自体も切ったり突いたりするエキサイティングな光景やったし、
一方、エンデル自身のサバイバルは、スパイ・スリラーのような展開を見せる。
彼は自分の道徳的な選択の結果を受け入れなければならないねんなぁ。
控えめな演技、最小限の台詞、政治的緊張感と若者の希望のバランスが、この映画を感動的な教師というジャンルの最も明白な陳腐さから遠ざけるのに役立っている。
エンデルのフェンシングスクールが現在も運営されていることからもわかるように、この作品はよく練られた感動的な物語であり、派手さはないがヒロイズムを描いている。
これが実話の持つ静かな感動なんかなぁ。
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