神戸典

羊の木の神戸典のネタバレレビュー・内容・結末

羊の木(2018年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

この作品は終始恐怖感が続いた。
元受刑者の放つ異様な空気や不気味な表情が徐々に本性を現し自らが危険に犯されるような感覚。
どこまで彼らを信じ、何が嘘なのか。
元ヤクザの大野は顔の傷が原因で周りの住人から避けられるが、クリーニング店の店長は大野を悪いやつだと感じたことがないという。理髪店で働く福元はかつてのように店長に罵倒されるのを恐れるが、店長も元受刑者でお互いの境遇を理解した。
介護で働く太田は月末の父親に全てを打ち明けそれでも2人は共にする。
釣り船屋の杉山は以前と変わらず犯罪に手を染めようとする。
そして月末にとって友達になるほど話し合った宮腰は未成年の頃から変わらず人を殺め続ける。
元受刑者という言葉で一括りにされてしまうものの、一人一人その後の生き方は全く違う。中には何も変わらずに再び手を染める者がいるのも事実。
しかし変わろうと努力する者がいるのも事実。さらに犯罪者でも恋をするのは当たり前であるとも言っているように思う。
そんな元受刑者に対して最後まで偏見に争い、相手を知ろうとしたのが月末であり、結果的に彼は宮腰の気持ちを変えることはできなかった。
ストーリーの展開として一番気さくで話しかけやすく、町に溶け込んでいた宮腰が一番やばい奴というのは事実を知る前から予想できた。しかし役者一人一人の表情や演技が実にリアルで観終わった後もしばらく恐ろしさが残った。

羊の木というタイトルは
その種子やがて芽吹き
タタールの子羊となる
羊にして植物
その血 蜜のように甘く
その肉 魚のように柔らかく
狼のみ それを貪る
という詩から来ている。

おそらく意味としては一見更生し、種子が芽吹き子羊となっても、その中身は人でありながら犯罪者。どんなにいい人に見えても真実はどうかわからない。
それを知るのは同じ道を歩んで来た元受刑者ぐらいではないかということなのだろう。
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