マヒロ

女神の見えざる手のマヒロのレビュー・感想・評価

女神の見えざる手(2016年製作の映画)
4.0
凄腕ロビイストのスローン(ジェシカ・チャスティン)は、銃規制の緩和に関して、女性の立場から女性側の賛成意見を取り入れて欲しいと依頼されるが、安直なそのやり方を一笑に付したスローンは、真っ向から対立することとなる…というお話。

ロビー活動とは、政治家ではないある団体の思想や政策を政党や議員に対して働きかけるという活動で、ロビイストはそれらを行う人達のこと(自分用メモ)。
……ということを簡単に頭に入れておかないと置いてけぼりくらうかも。

主人公のスローンは何があろうとも自らの正義を貫く信念の人だけど、決して"良い人"ではないというのがミソで、目的のためなら自分がいくらボロボロになろうと構わないし、周りの人間が利用できそうだったら、その人のことは御構い無しにとことん利用しつくすという、敵に回したら恐ろしいが味方にいても恐ろしい曲者。
強大な銃ロビー(銃規制法案反対派)を相手取るにあたって、犯罪スレスレどころか片脚突っ込んでいるような方法で対抗したりと、とにかく清廉潔白とは言い難い。ただ、相手もそれなりに汚い手を使ってきており、綺麗事を言ってたら務まらないのも事実で、これだけでも政治の世界の嫌な部分が垣間見える。
この嫌な部分も含めて一挙に背負ってるのがスローンというキャラで、単純な善悪の価値観に収まらないアンチヒーロー的な存在だと思った。

主人公は銃規制賛成側の人間で、こちらも基本そっち側に肩入れして観るわけだけど、劇中の人物と全く同じような形で銃規制に対する価値観を揺さぶられるような事件が起きて、このタイミングがまたニクい。銃があることで起きる犯罪もごまんとあるし、逆に銃があったからこそ防がれた悲劇もあって、いくら議論しようとも白黒ハッキリつけられる問題ではないんだな。
銃というのは、人の命を奪うものという以上に僕の好きじゃない権威主義・男根主義的なものの象徴になっているように思えて、架空の娯楽の世界以外からは無くなっちまってもいいんじゃないかと思ってるんだけど、そう単純な話でもないんだろう。

矢継ぎ早に飛び出す専門用語にスピーディな展開で、多少理解が追いつかなかったところが無きにしも非ずで、ラストのどんでん返し的シーンも一瞬何が起きてるのか分からなかったり。そこはちゃんと答え合わせしてくれるが、細かい演出とかちょっとしたセリフが伏線になっていたということに言われて初めて気付くことも多くて、また改めて頭からじっくり観てみたいと思わせられた。

(2019.97)
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