愛鳥家ハチ

ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣の愛鳥家ハチのレビュー・感想・評価

3.7
ヌレエフの再来と謳われた才能、ウクライナ南部・ヘルソン出身の世界的ダンサーであるセルゲイ・ポルーニンを追ったドキュメンタリー映画。うつに苦しみ、ドラッグ中毒に陥りながらも、新たな跳躍をみせる彼の姿に大変勇気づけられる思いがしました。

ーー踊り続けること
 クリエイターである小島秀夫氏が評して曰く、本作は「我々に"上り詰める"のではなく、"踊り続ける"自由を教えてくれる」とのこと(注)。私たちはセルゲイ・ポルーニンという天才をドキュメンタリーというかたちで鑑賞するわけですが、彼の再起を感嘆のまなざしで(外側から)見つめるのみならず、私たち自身もまた、それぞれのフィールドで自由に踊り続けて良いのだと思わされ、気付かされました。

ーー優雅な野獣
 ライオンのように助走して、美しいジャンプをすることから、ポルーニンは「優雅な野獣」と呼ばれています。"Take me to the church"のパフォーマンスは、真の意味で解き放たれた野性味のある跳躍と、優雅さの中に滲み出る苦悩を感じさせるものでした。しかしながら、これ程までに悲しげなオーラを纏う"ライオン"は、彼を除いては存在し得ないのではないでしょうか。

ーー総評
 本作では、ポルーニンの栄光と挫折、そして復活の過程が、様々な色調の織りなすグラデーションとして迫ってきます。本作は、ポルーニンファンはもとより、『シンプルな情熱』(2021年)で彼の美しさに魅了された方々にも、彼をより深く知ることのできる作品としてお勧めできます。

(注) https://www.uplink.co.jp/dancer/comments.php (2021/07/07閲覧)
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