140字プロレス鶴見辰吾ジラ

オリエント急行殺人事件の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

オリエント急行殺人事件(2017年製作の映画)
3.5
”赤信号…”

自分の一般教養のなさを悔やんでしまった作品。アガサ・クリスティが生み出した名探偵ポアロの傑作ミステリー「オリエント急行殺人事件」をケネス・ブラナーがメガホンを取り2017年というご時世に復刻。もはや古典落語的な位置づけであろう「オリエント急行殺人事件」。その顛末を私自身知らなかったというのが自身の無知っぷりを確認しに行ったのかよ?と思ってしまった次第。密室殺人における犯人捜しというミステリー要素の王道でありながら、当時のミステリーの決着としてハイインパクトを残し、数々オマージュをされた殺人の顛末は、おそらく多くの人が知ることとなっているはずなので、2017年という今できることは、煌びやかな豪華キャストとオリエント急行の内装やキャストの衣装の再現力を超えた疑似世界体験感を生み出せるかどうかに重きを置くべきかと思うし、さらに作品のテンポ感や役者の演技合戦による緊迫感が必要とさせると感じる。冒頭の古典落語と書いたように、語り手(監督・スタッフ・キャスト)によっての味の効かせた方を楽しむ作品である。ただ殺人の顛末を知らなくとも、途中で「これ、犯人って○○だよね?」と乗客の設定のぶっ飛び方的に気づいてしまった。個人的な意見として、劇場版のミステリー作品において”飛び道具”的な決着をつけることは、シリーズのワンエピソードではアッと驚くが、劇場版スケールでは禁じ手なのでは?と思ってしまった。それでも殺人現場を最初に発見するシーンの上からのショットとそこからのカメラアングルは今までに見たことがなく、思わず身を前に乗り出してしまったり、雪中の渓谷を切り裂くように走るオリエント急行のシーンは、背景が背景画もよく素直に格好良かった。物語の顛末も、ポアロが謎を解き、列車内という密室性の気まずさを利用した、何とも言えない乗客の陰鬱な表情をセリフなしで撮ったところは良かったと言える演出だった。ただ小説でなく劇場映画であるがゆえの、ご都合主義的な配置図とアクションは、シーンのためのアクションでしかないの域に収まっていて、もっとも印象的な動きは、拍車の豪快な飛び蹴りであったのは言うまでもない。