カツマ

ブルーム・オブ・イエスタディのカツマのレビュー・感想・評価

4.0
昨年の東京国際映画祭グランプリ受賞作品!しかもホロコーストを扱っている、となるとどれだけお堅いお話?と思いながら見てみたら、中身は何と濃厚濃密な情熱型ラブストーリーなんです!これ本当にドイツ映画なの?というくらいフランス映画臭のする際どい描写の連続で、ジョークがブラックすぎて軽く引いてしまうほど笑えない(笑)
ホロコーストの歴史を背負った子孫達という設定は重く悲しいのだが、それを感じさせない軽やかなメンヘラストーリーになっており、逆説的にナチスドイツの痕跡を残しながらも生きて行く、決意めいたものを象徴しています。

ホロコースト研究員のトトはナチスドイツの大佐だった祖父の十字架を背負ったまま生きている。研究室ではアウシュビッツ会議を開催しようとしていたが、その準備期間中に何と教授が死去し、トトも会議の担当を外されてしまう。フランスからの研修生のザジのお守りを押し付けられたトトは、最初は何かと反抗的なザジと諍いが耐えないが、次第に2人は男女としてお互いを意識するようになっていく。だが、ザジの祖母はホロコーストの犠牲者であり、トトとは遥か遠い過去に繋がりがあった。それこそが、2人を結ぶ切っても切れない運命の糸だったのだ。

新進気鋭の若手女優アデルエネルの魅力が全編で炸裂しまくっており、強そうでいて実は心に咀嚼できない重石を抱えた複雑な心の内を見事に演じ切った。シリアスなテーマをコメディタッチのラブストーリーに落とし込むという離れ業を見事に成功させた稀有な例。そう、悲劇的な歴史を直視してこそ生まれる作品。ラブストーリーなのだが、上質な教訓映画でもあった。
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