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愚か者の船のHKのレビュー・感想・評価

愚か者の船(1965年製作の映画)
3.5
ジャケ写を見てカラー作品と思ったらモノクロ・スタンダード。あるあるです。
『ケイン号の叛乱』『ニュールンベルグ裁判』のスタンリー・クレイマー監督作品。
舞台は1930年代、メキシコからヒトラー政権下のドイツに向かって航行中の客船上の群像劇を描いた同名小説の映画化です。
船上にはさまざまな愚か者(?)が溢れており、そのメンバーが豪華。

この作品が最後の作品となったヴィヴィアン・リーは気位の高い孤独なお1人様。
がさつで下品なアメリカ人代表はリー・マーヴィン。
伯爵夫人シモーニュ・シニョレと船医のオスカー・ウェルナーは惹かれ合い道ならぬ恋に。
差別主義の鼻持ちならないドイツ人役はホセ・フェラー。
画家のジョージ・シーガルは同じく画家の恋人と破局の危機の真最中。

他にもユダヤ人のセールスマン、ジプシーの踊り子たち、愛犬連れの老教授夫妻などのさまざまな人間模様が、メキシコの港からドイツの港までの船旅で描かれます。

最近観たパルム・ドール受賞作『逆転のトライアングル』とどことなく似てる気がしますが気のせいでしょうか。あれもまさに“愚か者の船”でした。
こちらは海が荒れたり難破したりはしませんけど。

アメリカ人客(マーヴィン)が「俺たちはユダヤ人を差別したりしないぞ」と言うと、「あなたたちは黒人をいじめるのに忙しいからでしょ」とイギリス人客(ヴィヴィアン)から皮肉られるシーンは笑えます。
でも、食堂でドイツ人客に差別されたユダヤ人客が「彼らだってまさか500万人もいる我々ユダヤ人をどうすることもできないはずだ」と言って笑うシーンにはギクリ。
この数年後にはホロコーストが迫っているわけですから。
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