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ミュージアム 序章のhorahukiのレビュー・感想・評価

ミュージアム 序章(2016年製作の映画)
3.1
親子愛vs親子愛!!

最近バタバタしてるせいで書き溜めてた感想の在庫がもうない…。というわけで上映時間短くて前から見ようと思ってた本作を見てみました。大作だった『ミュージアム』本編に対して、本作はめちゃめちゃ低予算なPOVで白石監督らしさ溢れる作品でした。

あらすじ…
幼女樹脂詰め殺人事件の犯人として逮捕された男。彼のことを冤罪なのではないかと疑う主人公は独自に調査をしているとカエルの着ぐるみを着た男に「事件の秘密を教える。今すぐ家に帰れ」と告げられる。急いで家に帰ってみると中は荒らされ娘の姿がなく、「これをつけろ」のメモ書きとともにイヤホンとスマホが置かれていて…。

正直、本編よりもこっちの方が好きかも。
やりたいことがぶれまくりだった本編に対して、本作はクオリティは低いけどやりたいことをやり切った作品という感じで好印象。

本編では芸術家として描かれたカエル男ですが、本作ではその芸術性を映像作品へと見出している。映画監督であり映像作品を製作する芸術家として、白石監督は自身をこのカエル男に少なからず投影してるんじゃないかな。もちろん白石監督がこんな残虐なことしたいとか考えてるっていう意味じゃなくて、「映画や映像作品も等しく芸術である」ということをカエル男を通じて訴えかけてるように思える。本編では芸術から外された「映像」を、映画監督だからこそ芸術として描かずどうするんだ!という気概と意地を感じました。

内容的にはトーチャーポルノに近いです。と言ってもグロいシーンがあるわけでもなく、胸糞もそれほど強くはないので、同種の作品と比べると割と見やすい部類に入ってくるように思います。椅子に縛り付けたJKの顔を殴りまくるのは流石に辛くなりましたけどね…(・_・;

『グロテスク』の時も『ある優しき殺人者の記録』の時も思いましたが、白石監督って異常心理状態での他者への愛だとか強い思いを描くのあんまりうまくないですよね。凄くステレオタイプ的というか。親だからだとか恋人だからだとか一定の関係性があれば当然愛が生まれることを前提にして(当然そうなんだけど…)、それ以上の深みに切り込まないから、彼らの必死の叫びがシュールさしか生み出さない。

胸糞をほとんど感じないのもこういったところに原因があると思うんですよね。そもそも胸糞は平穏な日常が前提にあって、そこからの逸脱加減や侵食される不快感、そして監禁される側の内面的な思いの機微によって生まれてくるものだと思うので、そこら辺の描写をほぼほぼ放棄してる本作ではイマイチ振り切れない。

そして主人公の行動原理を「目的のためなら手段を選ばない」「自分でやってるように振る舞え」のふたつのセリフで片付けてしまうのもちょっと乱暴。短い作品だから仕方ないのかもだけど、これだけでは主人公の完璧なまでの従順さにイマイチ説得力がないように思いました。

白石監督は『地獄少女』撮るみたいで楽しみ!アニメは昔見てて、今でも好きな作品なんですよね〜。正直、白石監督と相性あんまり良くないような気がするけど、どんな感じにぶっ飛んだ改変するのかも気になります♫
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