なべ

特捜部Q Pからのメッセージのなべのレビュー・感想・評価

特捜部Q Pからのメッセージ(2016年製作の映画)
3.5
 シリーズ3作目。前作よりかなり映画っぽくはなったが、テレビ映画感は拭えず、コールド・ケースやクリミナル・マインドの前・後編的なイメージ。
 今回の事件では、宗教と信仰がテーマ。犯人・被害者がともにエホバの証人の関係者、伝道師と信者なのである。
 エホバの証人では政府機関や企業などの組織はすべてサタンの支配下にあると定義付けていて、警察への通報は、すなわち悪魔と手を組むことになる。ゆえに通報されない。そんなあほな!と思うだろうがそういう教義なのだから仕方ない。輸血を禁じたことで起こるトラブルはよく話題になるから、それで知っている人も多いのではないだろうか。
 一応、エホバの証人の是非を問うようなストーリーではないが、それでも誘拐犯が顔見知りなのに警察に届けない両親や、これまで同様の手口で犯行が繰り返されてきたにも関わらず警察に記録が残ってないなど、エホバの証人の慣習はかなりヤバい。普段から自分とは異なる価値観を認めたいと思っているが、こと宗教に関してはぼくは不寛容な人間なのだ。
 通報しない両親、子供を虐待する母、暴力で信仰を破壊する犯人、無信心の刑事などなど、各登場人物と宗教とのさまざまな距離感がいろんなカタチで提示されるのがおもしろい。それらの違いを意地悪に配置して、物語はクライマックスへ。
 悪魔の所業が奇しくも洗礼めいていたりして、北欧ならではの陰湿な演出が胸糞が悪いことこの上なし。
 実在するカルトを使ったことで、こんなにも宗教と信仰が皮肉に描かれるなんて、やっぱりこのシリーズは脚本がうまいわ。
 カールのメンタルの行方がいよいよやばくなってきているのと、回を追うごとに順調にスケールアップしているのが肌で感じられる。次の作品では映画的醍醐味が満たされそうな気がしてきた。カールとアサドとローセの関係性にも注目している。楽しみ。
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