カツマ

特捜部Q Pからのメッセージのカツマのレビュー・感想・評価

特捜部Q Pからのメッセージ(2016年製作の映画)
4.1
深海のように果てなく沈む闇。その奥底に溜まりきった膿をほじくり返すかのように、猟奇的な殺人が悲しみの連鎖を巻き起こす、特捜部Qシリーズの3作目。
2作目の強烈すぎる幕切れで身も心もズタズタになったカールを襲う新たな刺客は、消えることのない悲しみと怒りを宿した狂気のシリアルキラーだ。1〜2作目まで徹底して重苦しく、救いの少ないこのシリーズだが、1作目の『羊たちの沈黙』的な不気味さは減退し、ヘリや列車まで巻き込んだエンタメ要素が増大する。しかし、犯人の凶悪さは過去最悪。容赦なく悪魔の鎌が振り下ろされ、背後から襲いくる得体の知れぬ恐怖が付きまとう。
作品が進むごとに面白くなるこのシリーズ。この3作目もサスペンススリラーとして比類のない完成度を誇っています。

20年前の双子兄妹殺人事件を解決へと導いたカールとアサドら特捜部Q。しかし、惨劇にまみれたこの事件の顛末はカールの精神を蝕みボロボロにしてしまっていた。
ある日、特捜部に残されたアサドや秘書らのもとに『助けて』と書かれた枯れ果てた手紙が届けられる。アサドは何とかカールを特捜部へと呼び戻し、二人は手紙の差出人のイニシャルがPであることを解読。文体からPの正体が子供だと見当を付けた二人は、行方不明になっている子供のデータを洗い始めるも・・。

この事件のテーマには、人の心をときには救済し、ときには支配する宗教観が根底に横たわっている。宗教を信じないカールと宗教に救いを求めるアサドを対比させながら、それら一般的な概念から逸脱し、極端な思想へと暴走する犯人の異常さをも克明に描き出している。

今作が今までの3作の中で最も猟奇性が高く、残酷描写が濃い。だが、ミステリとしての臨場感も過去最高値を記録しており、シリーズ中最もストーリーに面白さを感じた作品だ。
ボロボロになったカールに救いは訪れるのか。原作と同じくあのラストシーンの続きが描かれることを切に願いたいと思った。
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