八木

名探偵コナン から紅の恋歌の八木のレビュー・感想・評価

2.5
プログラムピクチャーとしてドル箱のコナン映画について、外様があれやこれやというのはもう本当お門違いだとは思います。が、こうして数年ぶりに映画館で見てみるに、「これが毎年爆発的ヒット映画でよいのか」と呆気にとられるぶっ飛び作品だとつくづく思います。鑑賞中は「どうしてこんな目に合わなければならないのだ、誰の責任だ」と恥ずかしさに下唇かみちぎりそうになることや、天空を突き破るほど積みあがったご都合主義に、江戸時代、辻斬りに合う直前の町娘のように地面にへたり込まされること数回ずつありました。これに文句言う奴はもうお前の森へ帰れ!二度と来るな!ということでしょう(反省したので数年は行きません)。
映画のお決まり、冒頭で「コナンとは、メイン登場人物とは」という説明があります。国民的アニメ・マンガ作品となった現在、もう口にするのも面白くないのは承知で書きますが「毒を飲まされたら体が小さくなってしまった!」と改めて口頭で説明されますと、「お前は今ムチャクチャなことを言っているぞ!分かっているのか!」と立ち上がってスクリーンに指をかざしたくなりました。そして少なくともこの映画内で、冒頭にばっちりと振った「黒の組織」について解決の兆しは全く見せません。もはや、コナン映画は通常映画で行われる手順から外れている存在なのです。地味に作画も粗いし。ギャグが致命的に面白くないし。
作品全体を眺めまわしますと、改めて発見したこととして、この作品は平次と和葉というありもののキャラクターの魅力を、新キャラ紅葉の魅力を使って引き立てて楽しむという方向に振り切っていまして、だとしたらテレビや原作ファンの渇きをある程度潤す機能は持っていたと思います。そして、紅葉ちゃんは魅力的に描けていたし、この点は素晴らしいと思います。事件とその解決については、この作品だけかどうかはわかりませんが、相当存在感が薄く味付けされていました。このバランス感覚って、わりと好感ありましたね。とはいえ、コナンが好きじゃない場合はわりと拷問だと思うので、お気をつけください。
八木

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