こうん

散歩する侵略者のこうんのレビュー・感想・評価

散歩する侵略者(2017年製作の映画)
4.2
やぁ僕は20年来の黒沢清映画のファン。だからなんでも誉めるし忖度するし肯定的にとらえるよ!

とりあえず、長澤まさみに「しんちゃん!」(俺の名前)と何度も名前を呼んで貰って、それだけでも至福でした、ありがとう黒沢清監督!
あと、長澤まさみの「やんなっちゃうなぁ!」の向こうに「東京物語」の杉村春子が見えた。

設定こそはインベージョンものなんだけど、そこは黒沢清、狙ってるんだかふざけているんだかのジャンルミックスの面白さがあって、映画の顔ってほんとギリギリ細い境界線の上に成り立っているんだなぁと思うし、黒沢清は軽々に越境するんだ。
そこが面白いし、スリリング。

そうやって要所要所で“映画”をめくってみせてドキドキさせるんだけど、「なんかわかんないけど宇宙人に侵略されているっぽい」というお話に、現代社会の感情を透過させているのが、
黒沢清の映画が現代的である理由であると思う。
かなりコメディ寄りの演出が為されていて分かりにくいけど、“宇宙人”が概念を得ていく度に人間っぽくなっていく反面、概念を失った人たちが人ならざる様相を呈していく様が、なかなかシニカルで、だけども物語の着地は恥ずかしいくらいに全うな、“無償の愛”なんである。
(混乱の病院でなんの概念を失ったのか、内田裕也みたいな人がいて笑った)

そのドラマの中心人物を演じる長澤まさみが良かったなぁ。
「回路」の麻生久美子のように不安で毅然として優しく、美しかった。
こんな変な映画(笑)を高める芯となる存在だったのではないでしょうか。

ディテールを誉めていくと、東出くんや笹野さんの最高で磐石の使い方とか、黒沢映画ニューカマー高杉くんのはまりっぷりとか、恒松さんのアクション能力の高さとか、タイトル出てくるところの素晴らしさとか、教会の子供たちの感じとか、長谷川さんのハートがあればあるほどうさんくさくなる感じとか、タガがが外れた光石さんの「ぶーん」とか、長澤まさみの部屋の斜線を強調した不穏な美術セットであるとか、終盤の中川信夫感であるとか、「一方通行」「スリップ注意」の道路標識が映り込むところとか、いつもの間のない銃撃戦とか、急に影が膨張する恐怖表現であるとか、たまりませんでした。

僕の観た映画館は黒沢清リテラシーの高い方が多かった感じで、いい感じで笑いが起きていて良かったな。
(東出くんの登場には爆笑が起こった)

一般的には変でつまらない映画なんだろうけど、僕はすごく面白かった。
クリーチャーが出てこない寄生獣を黒沢清が好き勝手に映画化した感じでね。

それにしても黒沢清は「悪魔のいけにえ」が好きなんだなぁ。出だしのドア引っ張りこみは多分そうでしょ。

(しばらくしたらクロキヨ映画に高橋一生氏も登場するぞきっと)
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