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熱いトタン屋根の猫のRのレビュー・感想・評価

熱いトタン屋根の猫(1958年製作の映画)
4.2
すごい話です。冒頭いきなりセックスレス…どころか妻のマギーに指一本触れたくも触れられたくもない、スーパーイケメンのブリックがアル中で酒をあおりまくってて、マギーがどうしてこんな状態なの!と彼にすがってる。マギーは彼に惚れ込んでて、あぁせめてあなたがイケメンでなければ…と嘆く。あんたたちに一体何があったのかね、と思って見てみると、どうやらマギーがブリックの親友と一夜浮気して以来、そういう状態であるらしい。最初は、妻の浮気が許せなかったのだなと思いながら見てると、おや?ちょっと違うようだぞ? どうも彼は親友を妻に取られたことで怒ってるようなのだ。ナルホド。そっちの組合系の話か。と同時に、今日はブルックの大富豪のお父さんの誕生日。検査入院から帰って来たビッグダディを迎えるブリックの兄一家の大歓迎ぶりのフェイクなことといったらない。彼らは死にゆくダディの遺産を狙ってるのだ。特に兄嫁。こいつが死ぬほど不細工で、こいつが産んだ5人の子供ももれなく不細工。まぁよくこんなのすげえ顔の俳優ばっか集めたなと感心するくらい。マギーはこのガキどもを嫌いすぎてて、太った胴体の上に頭部がそのまま載ってるように見えるから、首なしモンスター!と子供たちを罵ってるのがおもろすぎて笑ってしまった。で、ガキどもは、子供がいない彼女に、子どもが産めない役立たず!みたいに罵りバックするのです。何と醜い…。一体この大変な人たちはどうなっていくのだろう。彼らの一日を、ほぼ家の中だけで展開していく舞台劇のような作品。てわけで、俳優の演技と脚本が最重要な要素なのだが、とにかくスゴイのが、ブリック演じる当時のポールニューマンの驚異的イケメン度! 確実に世界トップレヴェル! 始終釘つけ! そりゃこんなイケメンが家にいて、エッチさしてくれんかったら、熱いトタン屋根のネコのように苦しみ悶えるのも当然。マギー演じるエリザベステイラーもすごい美人なのだけど、彼女すら霞ませるポールの圧倒的なルックスには吐息しかない。特に、美しすぎるブルーの瞳に涙を浮かべたときの神々しさには全生命が激震。OMG。あと、ビッグダディの存在感も素晴らしい。ひたすら富を追い求め、子どもたちに愛を与えることができなかったためにできあがってしまったギスギスした関係。彼らはそれを修復することができるのか? ここまで深刻に崩れてしまっては無理なのでは…ってとこから、さすがにちょっと無理がある展開に、え? 何このハッピー強制終了…となってしまうのが、何だか飲み込みにくい。もうちょっとリアリスティックな着地になってれば、文句なしの名作になっていただろうに。まぁでもいいんです。とにかくポールニューマンが見れればそれで。個人的に、すごくいいなと思ったのが、死を前にしたビッグダディが、すべての富に何も意味がないことを悟るシーンと、最終的には誰をどう愛した人生だったかということに対峙させられるとこ。死を目前にしたとき、人は裸一貫でそれに臨むしかないのだ。そのときその人に残されるものとは一体何か。そこはマジですごくいいテーマだった。あと何度も出てくるキーワード、mendacity(虚偽)ね。これは、もう普通にいろんなことを誤魔化しながら生きてる人は、みんな見ててイタタタタタとなるんではないでしょうか。いやー面白かった。
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