Filmoja

メアリと魔女の花のFilmojaのレビュー・感想・評価

メアリと魔女の花(2017年製作の映画)
3.0
うーん、いろいろと惜しい!
米林監督、せっかく新しいスタジオを立ち上げての第一作が、これ…?って劇場公開時は肩透かしを食った人も多かったのでは。

主人公が女の子で、舞台が欧風で、魔女の学校に迷い込んだり、突然、魔法が使えるようになったり…というファンタジーの教科書のような脚本・設定がすでに、これまでジブリでやり尽くしてきたことでは…と。

いや、監督自身がこれまで培ってきたものが存分に表現されているという意味では、既存の作品へのオマージュ、いわゆる観客の想定の範囲内では成功なのかも知れない。

ただ、独立して最初の作品としてはインパクトが薄い。おいしいと分かっている素材を適当にミックスして、薄めて料理されている感じ。
これまでのジブリファンはある程度満足するのかも知れないけど、自分は名作の劣化コピーなど求めていない。
人物描写も曖昧であまり印象に残らないし、初めて観る子どもたちにとっても、感情移入できるかどうか甚だ疑問だ。

細かい点を上げればキリがないけど、手描きの温かみやCGとのバランス、自然な動きやしぐさ、背景や映像の美しさは抜群なのだから(当然か)、「ゲド戦記」にも感じた原作倒れの残念さ、それに尽きる。
今これを、この時代に、あえて描く必要があるのかどうか。

自分が観たいのは、文明批判や自然崇拝などといった既存の焼き直しではない、監督の色が見える作品だ。
「アリエッティ」や「マーニー」は好みはあれど、少女の揺れ動く心情を繊細に描いた、米林監督らしい優れた作品だった。

「魔女の宅急便」は少女が失われた魔法を取り戻す物語であり、「メアリ」は魔法を手放す物語だ。
もうジブリの魔法は解けてしまった。
これからは監督自身の力で、誰もが新しいと感じる作品で勝負していってほしいと願う。
その方が、エンドロールで感謝を捧げた偉大な先輩たちも喜ぶのではないか。
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