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アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのYYamadaのレビュー・感想・評価

3.4
【実話に基づく傑作映画たち】
 ~事実は小説より奇なり

◆ベースとなった史実
〈五輪代表選考を巡るスキャンダル〉
  ~ライバル選手の襲撃 / 1994年
・場所: アメリカ/オレゴン州
・人物: トーニャ・ハーディング

〈見処〉
①記憶に残る「史上最大のスキャンダル」
・『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』は、ブラックコメディ調に描かれた2017年制作の伝記映画。
・舞台は1990年代のアメリカ。1991年の全米フィギュアスケート選手権にて、トーニャ・ハーディング(マーゴット・ロビー)はアメリカ人として史上初めてトリプルアクセルに成功。トーニャの名前と共にこの偉業は後世に語り継がれていくはずだった。
・しかし、1994年に事態は暗転。リレハンメル五輪の選考会となる全米フィギュアスケート選手権で、トーニャはライバルのナンシー・ケリガンを襲撃して出場不能に追い込んだのである。この事件によって、トーニャの業績を正当に評価することが困難になってしまった。
・悪戦苦闘しながらもキャリアを積み重ねていたトーニャが何故このような愚行に至ったのか。その影には幼少時からトーニャに言葉の暴力を振るってきた母親、ラヴォナと元夫のジェフ・ギルーリーの存在があった…(wikipediaより抜粋)。
・本作は、1992年アルベールビル、94年リレハンメルと2度の冬季五輪に出場するも、
元夫のジェフ・ギルーリーが、トーニャのライバルに対する「ナンシー・ケリガン襲撃事件」を起こし「世界でクリントン大統領の次に有名人」と揶揄されたスキャンダルな半生を描いている。
・本事件は、日本でも連日ワイドショーを賑わせていたことを多くの人が記憶しているはずだ。

②美しくないマーゴット
・本作ではプロデューサーを兼務したマーゴット・ロビーにとって、トーニャ・ハーディングを演じることは彼女のキャリアでは最大の挑戦。
・アイスホッケーチームに所属していた経験はあったマーゴットであったが、自身の結婚式の前日も含め、撮影に入る4カ月前から週5回、1日4時間スケートの猛特訓を敢行。本作のスケーティングのシーンにはプロスケーターによるボディダブルとCGも使用されているが、多くの場面ではマーゴット自身がスケーティングを行っている。
・オーストラリア出身のマーゴットがスケーティング以上に苦しめたのは、トーニャによるアメリカ北⻄部なまりの英語と、特徴のある笑い方だったそうだ。
・ブラックコメディとしてトーニャを野暮な人間として描いた本作では、ハリウッドのトップ女優であるマーゴット・ロビーに一秒たりとも美しさを感じないのは、彼女の演技力による賜物だろう。

③結び…本作の見処は?
○: 本人に成りきった俳優たちによるドキュメンタリー調のインタビューパートと、観客に語りかける「第四の壁の破壊」を用いたドラマパートを巧みに織り混ぜた演出がユニークである。
○: 本作の主要人物はクズ人間ばかりであるが、キャスティングが素晴らしく、エンドロールに登場する実在の人物にクリソツ。とくに、本作にてアカデミー賞の助演女優賞を受賞した母親役のアリソン・ジャネイと、本作にて脚光を浴び、『リチャード・ジュエル』主演に抜擢されたポール・ウォルター・ハウザーが印象的。
▲: 実際のトーニャ・ハーディングよりも美しさを感じないマーゴット・ロビー。見たいのは、コレジャナイ感が強い作品で、勿体ない。
×: 「史上最大のスキャンダル」と掲げる割には、ストーリーは凡庸でつまらない。当時のワイドショーのほうがドロドロしていて面白かった印象がある。
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