こうん

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのこうんのレビュー・感想・評価

4.5
おれ、中学生の時の文集かなんかで「好きなタイプ:トーニャ・ハーディング」って書きました。冗談半分だったけど、トレイシー・ローズに通じる蓮っ葉さと野暮ったさの同居したエロさと可愛さを感じてましてね…共感していただける同好の士はおられますかね?
そのトーニャ・ハーディングの半生の映画化をみんな大好きマーゴット・ロビー様が買って出たと聞いて興味がわかないわけはありません。伊藤みどり風のステップで映画館にぶっこんできました。
いやー、これは“アメリカ人が見たくないアメリカ”そのものの映画化です!
全然違う映画だけど、シャーリーズ・セロンの「モンスター」とか「ウィンターズ・ボーン」とか「ミリオンダラー・ベイビー」とかと同じ地平の映画だと思いました。あと「ペイン&ゲイン」も。(日本の映画でいうと「国道20号線」とか)
描かれるのはフィギュアスケートという華やかな世界ではあるけど、その足元には貧乏白人の血縁地縁因習が染みまくっています。ホワイト・トラッシュとかプア。ホワイトとかレッド・ネックとかヒルビリーとか呼ばれる人たちの、どうしようもならない物語。
“バカの、バカによる、バカのための、バカ物語”と形容できるような映画であるかもしれないけれど、僕は彼らを対岸の火事として「あはは、バカバカ!」と笑うことができない。彼らを“バカ”と蔑むことができるほど上等な暮らしをしているわけでもないし、賢くもない。
成功したいし、お金を得ていい暮らししたいし、モテたいし、愛されたいし、自分が思う何者かになりたいと頑張っている!
つまり、愚かだけど一生懸命にふてぶてしく生きようとしている!
…そういう映画ですよ。“人間、どっこい生きてやる”映画です。
トーニャは「私は悪くない」と連呼してましたが、そのとーり!
毒母や空気父や髭夫や陰謀論者デブに囲まれて、彼女の才能も努力も浪費されていきながらも悪態をついてねめつけ唾を吐き「私は悪くない」と訴えるトーニャの生きざまは、悲しいほど人間的です。
「バカだなぁ」と思いながらも、生まれ落ちた場所でタフにサバイブするトーニャに感服しちょっと憧れてしまう所以です。

映画そのものはスコセッシをトレースしたような作劇でありながら、きっちりと負のアメリカをバシバシ描き出していて、2018年の映画として類まれな強度を持った映画だと思いましたよ。
そしてマーゴット・ロビー様が体現するトーニャ・ハーディングの感情劇場として一級品でございました。

ちょうどこの映画を観る前に読んだ「文春」のグラビアに例の小保方さんが(自己愛の強そうな表情で)載っていて、僕は小保方晴子さんという人物に興味があるし、彼女のこれまでとこれからを知りたいと思いましたので、誰か彼女の半生を映画化してくれませんかね。

まぁとにかく面白かった「アイ、トーニャ」!エンディングは最高の切れ味でしたよ!アガるぅ〜( ^ω^ )
(サブタイトルは”私は悪くない”でよかったのに)
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