HK

軍旗はためく下にのHKのレビュー・感想・評価

軍旗はためく下に(1972年製作の映画)
4.5
フィル友のさやかさんのおススメ作品です。
『宇宙からのメッセージ』が大好きなさやかさんに、好きな深作欣二作品を聞くと「よくぞ聞いてくれました」といって答えてくれたベスト5のトップが本作です。
なんだか意外なタイトルと思いつつClipしておりましたが、ようやく鑑賞しました。

なるほど、これは確かにさやかさんが深作欣二の最高傑作というだけありました。
『宇宙からの~』からの振り幅がスゴイですが。
原作は結城昌治の直木賞受賞作。脚本は新藤兼人、長田紀生、深作欣二。

終戦後、戦死ではなく“敵前逃亡”で軍に処刑されたという富樫軍曹の妻サキエは、夫の処刑の真相を探るために同じ部隊の生存者4名を1人ずつ訪ねますが、徐々に意外な真実が・・・

オープニングからもう不穏な香り。
途中からの予想とは全く違う展開に驚きました。
反戦映画と言うよりは、反権力映画、反国家権力映画ともいえる硬派な作品です。
そのせいか、数年前まで海外版DVDでしか見ることができなかったとか。
国内版が発売されアマプラでも視聴できるようになったのはつい最近のようです。

東宝の配給ながら、深作の自主製作に近いらしく、『トラ!トラ!トラ!』で得たギャラをつぎ込んだものの途中から資金不足になり、私財を投げ打って撮った作品だとか。
そう聞くと、やはり自主製作に近い岡本喜八の名作『肉弾』を思い出しますが、本作からはもっと強い怒りと不信感を感じます。そこが“反戦”と“反権力”の差なのかもしれません。

モノクロとカラーの独特な使い分け、スチル写真にテロップの多用、飛び散る血しぶき、ドキュメンタリータッチ、本作の直後に撮られた『仁義なき戦い』シリーズの手法が既に見られます。

あの饒舌な丹波哲郎(富樫軍曹)がほとんど喋りません。夏八木勲なんてセリフあったっけ。
左幸子(妻サキエ)の話し方は『肉弾』のモンペのオバサンやワラジムシの少年に似ていますが、どこか共通の方言?
三谷昇、ラッキー7(関武志・ポール牧)、江原真二郎、中村翫右衛門などみんな印象的。

間違いなく名作です。深作欣二の代表作の一つでしょう。
いろいろと考えさせられました。
そういえば丹波哲郎もさやかさんのお気に入り俳優のひとりでした。
さやかさん、ありがとうございました。
HK

HK